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ウルトラマンカイナ
特別編 ウルトラカイナファイト part6
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がつく。彼は再び、ウルトラマンとして立ち上がらねばならなくなったのだろう。
 もはや、ウルトラマンの力だけが頼りなのだ。その背を押して戦いに行くよう促すのは、当然のこと。それは、頭では分かっている。

「ほんと……やだなぁ」

 それでも本心では。そんな使命になど背を向けて、自分と一緒にここから逃げて欲しかった。ウルトラマンという過酷な道になど、戻って欲しくはなかった。昨日までの穏やかな日々のように、ただの大学生のままでいて欲しかった。
 地球の未来などより、自分と過ごす1秒を優先して欲しかったのだ。要がどれほど苦しい思いを抱えながら、1年間も戦い続けていたのかを、知っているが故に。

「菜緒……?」
「……ん〜ん、何でもない。ホラ、早く行かないと怪獣が来ちゃうよ! 皆を守るんでしょ?」
「……あぁ。守ってみせるさ、必ず。お前も早く佐渡先輩のバスで、少しでも遠くに逃げるんだ」

 だが、この本心を悟られてはならないのだ。自分の気持ちが、要の枷になってしまうことこそあってはならないのだから。
 菜緒はそんな葛藤を胸の奥にしまい込み、笑顔で要を送り出して行く。

 どこか寂しげな色を残した彼女の笑みに、思うところを抱えながらも。要は促されるままに、バイクのエンジンを起動させるのだった。

「もし負けちゃったりしたら要君の正体、今度の動画で配信しちゃうからねっ! 私のパルクール動画、ますますバズっちゃうかなぁ〜?」
「負けられない理由を余計に増やすんじゃねーよっ!」

 菜緒は光が運転するシャトルバスに向かって走りながら、軽やかに振り返ると。懸命に手を振りながら、自分なりの激励の言葉を送る。
 その洒落にならない内容に怒号を上げながらも、要は苦笑を浮かべてバイクを発進させて行くのだった。光のバスと別れるように。菜緒の視線を、振り切るように。

「……絶対、ちゃんと帰って来てよね。ガチの告白、まだなんだから」

 そして。遠くへと走り去って行く要のバイクを、寂しげに見送りながら。菜緒は独り豊かな胸に手を当て、「再会」が叶う未来を祈るのだった。

「……来たなッ!」

 それから、僅か数分後。要を乗せたバイクが無人の街道に辿り着いた瞬間、その頭上に無数の瓦礫が降り注いで来た。
 ウルトラマンカイナとテンペラー軍団の激突による「余波」は、この地点にまで及んでいるのだ。要は左右にハンドルを切り、スピードを落とすことなく紙一重で瓦礫をかわしていく。

「ぐッ!」

 それでも「変身前」の身体能力が人間と同じである以上、全てを回避することまでは叶わない。墜落の際に弾け飛んだ瓦礫の破片が、要の頭部に命中してしまう。

「まだ……だァッ!」

 だが、吹き飛んだのは彼が被っていたヘルメットだけであり。切れ
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