第四十三話 麦わら帽子その六
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「あの」
「黄色ですね」
「そちらは」
「それは企業秘密です」
微笑んでこう返された。
「申し訳ありませんが」
「そうですか」
「はい、ただ下着の色ということはないので」
それはないというのだ。
「トランクス等については」
「そうなんですね」
「はい、シャツも」
そちらもというのだ。
「私はないです」
「黄色じゃないですか」
「そこは秘密ということで」
「企業秘密ですね」
「そうです、それでなのですが」
咲にさらに話した。
「私にはこの五色が必要なので」
「その服なんですね」
「夏でも出来ればコートを」
これをというのだ。
「羽織っています」
「何かマントみたいですね」
「ははは、そうかも知れないですね」
咲の今の言葉には笑って返した。
「実際に」
「マントだったら恰好いいですね」
「日本でもマントは使われていましたし」
「明治時代の学生さんとかですね」
「軍隊でも陸軍が使っていました」
そうであったというのだ。
「そうでした」
「元々熱を防ぐ為なんですよね」
「熱に寒さに」
「防寒着でもあったんですね」
「そうした目的のもので」
「恰好良さとですね」
「お洒落もあり」
その要素も確かにあったというのだ。
「使われていました」
「何か上杉謙信さんも持っていたとか」
「はい、それも残っています」
その現物がである、謙信という人物はそうした格好よさにも興味があったらしく実際に羽織っていた様だ。
「織田信長さんもでしたね」
「あの人は洋服まで着て」
「そしてです」
「マントもでしたね」
「それで馬揃えに出られていますね」
「そうでしたね」
「その様にです」
日本でもというのだ。
「着ていました」
「そうでしたね」
「そのマントの様だと言って頂けると」
それならというのだ。
「私も悪い気はしません」
「そうですか」
「非常に」
咲に笑顔で話した。
「それはいいですね」
「そう言って頂いて何よりです」
「はい、店長さんが暑くないのでしたら」
「いいですか」
「私は」
「それでは」
「はい、それで」
速水とはこう話した、そしてだった。
咲はアルバイトが終わると店を出たが道玄坂の方からだった。
黒いスーツと赤のネクタイと白のブラウスを身に着けた長い黒髪を後ろで団子にした切れ長の目の妖艶な女を見た、背は一七〇近くあり胸は出ていて脚は長い。
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