第二部
第一章 〜暗雲〜
九十 〜秘め事〜
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「いえ。……早速ですが、ご報告が」
私は頷くと、皆を促した。
謁見の間。
主立った者以外は出入りを固く禁じ、周囲は疾風の手の者が固めている。
間諜が紛れ込むのは、まず不可能であろう。
「まず、孫堅殿を討った呂公なる者ですが。江夏城へと入りました」
「江夏城と言えば、黄祖さんが太守を務めていますねー」
「これで、劉表殿が関与している事は疑いようがないでしょう」
禀の言葉に、皆が頷く。
「それで疾風ちゃん。襄陽の方はどうだったの?」
「思いの外警戒が厳重でした。劉表殿や蔡瑁らに近づく事は難しかったので、市井にて情報を集めました」
「疾風でも突破できぬ事もあるのだな」
目を丸くする愛紗。
「私とて人間、不可能もある。それでわかった事ですが、馬良殿が何処かに監禁されている事は間違いないようです」
「無法な事を。それを看過するだけの劉表殿も情けない限りだが」
吐き捨てるように彩が言うと、鈴々らも同感とばかりに頷いた。」
「それで疾風。馬謖殿の行方は知れたか?」
「いや、それが皆目見当がつかぬのだ、星。蔡瑁に協力を迫られ、拒んでいた事だけは判明したのだが」
「では、必ずしも馬謖が覆面の軍師……とは限らぬという事か」
「はい。とにかく此度の事は、裏の裏までありそうな雰囲気です。突き止めるのは至難の業かと」
少なくとも、蔡瑁は睡蓮の仇には違いあるまい。
そして、劉表が何らかの形で関わっている事も。
「……乗り込むか。襄陽に」
「殿、正気ですか?」
「主、いくら何でもそれは無謀ですぞ」
彩と星が慌てて諫めようとする。
「だが、このまま留まっていても利はあるまい。寧ろ、この地は速やかに引き払う必要があろう」
「鈴々はお兄ちゃんに賛成なのだ。蔡瑁をぶっ飛ばしてやるのだ」
「鈴々、少しは考えて物を言わぬか!」
「愛紗ちゃん、落ち着いて。……禀ちゃんに風ちゃんはどうなの?」
紫苑に名指しされた二人は、互いに顔を見合わせ、頷く。
「そうですねー。風はお兄さんの意見に賛成なのですよ」
「私もです。歳三様がそうお考えならば」
「……歳三殿。ご存念をお聞かせ願えますか?」
「無論だ。まず、これより我らの取る道は四つある。一つは、このまま長沙に留まる事だ」
「下の下ですねー」
「そうだ。我らの大義名分は賊征伐、それが他州の郡城に軍をとどめ置く事は許されぬ。それに、我らを糾弾する口実も与え兼ねまい」
皆が頷く。
「二つ目。このまま零陵郡及び武陵郡に軍を進め、区星を討ち果たす事だ」
「一見、最良の選択と思えますが……そのご様子では、殿の本意ではありませぬな?」
「うむ。区星なる者、未だに素性定かでない時点で疑わしき存在であろう。それに、睡蓮が事、蔡瑁らの差し金とあらば既に意義も失われていよう
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