第117話『夜明け』
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『────ッ!!!』
「うるさっ!?」
熱狂していた会場に、一際大きい巨人の雄叫びが木霊する。いや、会場だけではなく、この山全体と言っても過言ではない。
2回戦の【タイタン】とは訳が違う。この全身が青白い巨人の身長は10mは下らなかった。人間なんて簡単に踏み潰すこともできるだろう。そんな漫画を読んだことがあるだけに、一層恐怖が掻き立てられる。
「で、デケぇ……」
終夜からすれば、オリオンを見るのは初めてではない。ただし、過去の記憶だとサイズは5mくらいだったはずだ。
何がどうなって身長が2倍以上も伸びているのか。
「まさか成長期か?!」
「そんな訳ないでしょ。あたしだって強くなってるの」
危険を感じるとついつい軽口を叩くのは悪い癖だが、それだけ状況が切羽詰まってるのも事実。終夜が成長しているならば、当然月だって成長する。だって人間だもの。過去の感覚で戦えば痛い目を見るのは明白だ。
「やっちゃって、オリオン!」
オリオンが右手で持っていた棍棒を振り下ろす。その棍棒の長さも、オリオンの大きさに比例してめちゃくちゃ大きい。
身をひねるだけじゃ到底避けきれないその巨大な攻撃を、終夜へ何とか走って避ける。
しかし棍棒が地面に衝突したことで魔力が弾け、予想外の第二波となって終夜を襲う。
「マジか!? "夜の帳"!」
まるで高波のように押し寄せるその衝撃波を、黒雷のバリアで辛うじて防ぐ。身体が持っていかれそうなくらいの風圧だが、耐えられないほどではない。しかし、
「このままじゃ、いつペシャンコにされてもおかしくねぇ」
腕輪のおかげで決してそうなることはないはずなのだが、冷や汗だけはドンドンと垂れてきた。体躯が大きい動物は強者に君臨し、弱者を一方的に蹂躙できる。そんな弱者の立場に立たされて穏やかな気持ちでいられるほど、肝が座っている訳ではないのだ。
「こういう時に限って後ろに引っ込むんですよね……」
オリオンを無視して月本人を狙う方が戦略的なのに、肝心の彼女はそれをさせない動きを取っている。彼女の元にたどり着くには、オリオンの討伐が必須だ。
「この召喚獣達に弱点はない。けど、生き物の形に造形されている以上、形を崩せば機能を失う」
それが終夜の知る召喚獣についての知識。だからさっきまではゴリ押しで突破できた。
だが、この巨大サイズの召喚獣を一発で消し飛ばすのは至難の業だ。人型だから、四肢や武器を無くしても行動してくる可能性もある。
魔力は残り少ない。だから少ない手数でオリオンを倒し、月にトドメの一撃を加える。作戦こそシンプルだが、実行難易度は過去最高レベル。正直なところ、月への攻撃に今の全魔
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