第117話『夜明け』
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ま閉会式が始まった。開会式のように参加チームが全員フィールドに集まり、整列する。
ううむ、これでは風香たちにお疲れ様でしたと言いに行くタイミングがないな。閉会式が終わってから行くとしよう。
『これより、閉会式を行ないます』
戦闘中とは打って変わって、丁寧な口調で進行役を務めるジョーカー。そして淡々と式は進み、
『それでは、優勝チームの【覇軍】に優勝杖の授与を』
正面の高台に、全国魔術連盟会長の山本が再び現れる。その手には開会式でも見た優勝旗ならぬ優勝杖を持っていた。
その後、【覇軍】の4名が前へと出て、全員が手を重ねるように杖に触れる。するとピリピリと空気が震えてきたような気がした。
「あれは何してるんですか?」
「魔導祭のしきたりとして、優勝杖にチーム全員の魔力を込めてるんだ。つまり、あの杖には歴代の優勝チームの魔力がいっぱい詰まってるってことになる。もしあの杖があったら最強の魔術師になれるかもな」
「へぇ〜そんなに凄い物なんですね」
ただの優勝の証かと思いきや、とても魔術らしい仕組みがあった。しかも最強になれる杖だなんて、ゲームみたいでワクワクしてしまう。
「ハルト」
「どうした結月?」
「……何だか、雨が降りそう」
そんな興奮する晴登と違って、結月は落ち着いた表情で淡々とそう告げた。
晴登はそれを聞いて空を見上げる。確かに雲が集まって来ているような気がした。
「雨って、今日は晴れる予報じゃ……」
朝、ホテルで天気予報を見た時は晴れだった。しかも、雲一つない快晴の猛暑日になると。そんな中で雨が降るなんてとても運が悪い。
とはいえ、この会場は山の中にある。山の天気が変わりやすいというのは言うまでもなく、結月の感覚も信頼できるものだ。たぶん本当に雨が降るのだろう。
「ボクが氷で屋根を作ろうか?」
「さらっと凄いこと言うな。いや、やらなくていいよ。ちょっと濡れるぐらいだろうし」
しかし、今回は雨が降ったところで構うことはない。もう大会は終わっているし、服装だって汚れても構わないものだ。むしろ暑いから雨が降ってくれた方が嬉しいまである。
だから結月にそう答えて、この会話を切り上げようとした。けど、
「……あ」
何か、忘れているような気がする。「雨」と聞いて、頭の中で何かが引っかかった。おかしいな。最近雨が降ったことなんてないのに、なぜか雨に降られたような記憶が──
「──っ! 結月! 急いで屋根を作って!」
「ちょ、ちょっとハルト?! さっきのは冗談で……」
「早く!!」
「えぇ!? わ、わかった!」
晴登がいつになく声を荒
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