第117話『夜明け』
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で昼になったと錯覚してしまいそうになるほどの発光。会場にいる誰しもが目を覆い、何が起こったのかを把握できずにいる。
『な、何が起こったのでしょう!?』
実況であるジョーカーもその例に漏れず、目を擦りながら事態の把握を図る。
そしてようやく目を開けるようになって、フィールドを見てみると──
「ぐ……」
「……ギリギリセーフってとこかな」
砕けたフィールドの隙間に、終夜はうつ伏せで倒れ込んでいた。一方、月は肩で息をしながらも立っている。どちらが勝ちで、どちらが負けなのかは明白だった。
「いつ……の間に……」
「発動時間のこと? 確かに"ドッカン彗星"は発動までに時間がかかる技だけど──事前に準備しておけば良くない?」
「……!」
──"ドッカン彗星"。それが今しがた終夜を襲った現象の名前であり、月の切り札とも呼べる技だ。超圧縮した星の光を彗星に見立てて目標へと落とす。その威力は、隕石が落ちてきたと言っても相違ないほどだ。
ただ終夜の知る限り、この技には弱点があった。それは発動時間である。強力であるが故に、発動までに時間がかかるというものだ。
しかし、今回そのラグが無かった。彼女自身がその弱点を克服していたのならば話は別だが、真相はそうではない。
──恐らく、"星夜"を解放した時には既に、技の構築が終わっていただろう。つまりその時点で終夜の敗北は確定していた。
だが彼女はその技を最後まで撃とうとはせず、"いつでも発動できる状態"で戦闘を行なっていた。
手加減……とは少し違うが、少なくとも彼女は技を発動させないように力を調節しながら戦っていたことになる。その状態であそこまで終夜は打倒された訳だから、
「──完敗だ」
『決着です! 勝者、【花鳥風月】星野 月!』
完全な敗北を認めざるを得なかった。その後終夜は力尽き、フィールドの瓦礫の上で突っ伏したまま気を失った。
「……何が完敗よ。あんたがあたしをそこまで追い込んだってことなんだから」
そんな彼に歩み寄り、そう声をかける月。その表情は穏やかなものであり、後輩の成長を喜んでいるのだとわかる。
「この技は威力が強すぎて、下手すると会場の外にまで被害が出ちゃうかもしれなかった。だからできるだけ使いたくなくて、保険として準備だけしてたのにさ」
月はやれやれと肩を竦め、そして優しく微笑んだ。
「──強くなったね、終夜」
*
「あー負けた負けたー!!!」
試合が終わり、ホテルに戻ってきた魔術部一行。部屋に集まって一応ミーティングを行なうことになったのだが、帰って早々終夜がベッドの上で悔しさを露わに
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