第117話『夜明け』
[2/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
力を費やしたいというのが本音だ。それほど彼女の防御力は高い。
そのためには、オリオンと彼女を同時に攻撃、あるいは、
「──いいこと思いついた」
巨人がもう一度棍棒を振り上げ、次の攻撃へと備えてるというのに、終夜は笑みを浮かべていた。
タイタンが棍棒を振り下ろす。フィールドが割れんばかりの衝撃と共に、魔力の波が押し寄せる。
しかし終夜はそれを跳んで避けると、そのまま棍棒の上を伝って登り始めた。"風の加護"の要領で足の裏には魔力でバリアを張っているため、ダメージはない。
「嘘!?」
上を見上げて驚く月を尻目に、腕、肩と、終夜はドンドンと巨人の身体を駆け上がる。棍棒を振り下ろした姿勢は登るのに丁度いい。
「オリオン! 振り落として!」
「させるかよ!」
終夜が何を狙っているのかはわからないが、その狙いを阻止すべく、月はオリオンにそう指示する。しかしこの巨体の反応速度はそこまで早くなく、既に頭に到達した終夜はさらにそこから上空へと跳んでいた。
闇夜に紛れるくらいに高く、高く跳ぶ。"夜間強化"のおかげで、普段ではありえないほど高く跳べた。地上では味わえない風の流れが心地良い。
そして巨人どころか、会場を見下ろすくらいの高さに達した終夜は、右手に魔力をありったけ込める。黒雷が上空で星の光を遮るほど迸り、その電量に充てられてナイターの光がチカチカと点滅を始めた。
──これが終夜の導き出した答え。
「"奥義・夜天の霹靂"!!」
刹那、巨人の雄叫びに引けを取らない程の轟音と共に、一閃の黒雷が大地に落ちた。巨人の身体は雷によって両断され、膨大な魔力が空気へと還る。そして、棍棒による一撃とは比にならないくらいの衝撃がフィールドを襲い、ついに落雷地点を中心としてひび割れて砕けてしまった。
試合続行すら困難か。そう思わされる一方で、着地した終夜の視線は月の方を向いていた。
「まだだ!」
不安定な足場の上で、終夜は踏ん張り直す。
まだ力を抜くな。この技をそのまま月にも喰らわせる。この作戦は、同時に攻撃ができなくても同じ技で攻撃をすることは可能であるという、無理を通した作戦なのだ。
力み過ぎてもう右腕が痺れてきたが、構うものか。ありったけを彼女にぶつける。
「はぁぁぁぁ!!!」
「くっ……!」
叫びながら飛び出し、右手を突き出す終夜。残る全魔力と高空からの位置エネルギーを存分に練り込んだこの一撃ならば、さすがの月の防御も貫けるに違いない。
そしてその右手が月を捉える、次の瞬間。
──大きな光が、終夜を押し潰すように降りかかった。
*
夜なのに、まる
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ