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SAO─戦士達の物語
GGO編
九十八話 妹の不安
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「お兄ちゃん、また怖い顔してる」
と、直葉の気使わしげな声が脳裏に響いて、涼人は思考を戻す。見ると直葉が、和人の眼を不安げな光を瞳に湛えて見つめていた。
幸い、自分自身の方はピラフを食べる手を止めたいでいてくれたようで、少しだけ涼人は安堵した。

卓上にコピー用紙を置くと、直葉は和人を……否。涼人と和人を見つめたまま小さな子で言いだした。

「あのね、あたし、ホントは二人が……《キリト君》と《リョウ》が、ALOからGGOにコンバートした事知ってるんだ」
「…………!」
今度こそ、涼人は眼を見開いて停止した。和人は明日奈とユイにはその事を伝えた筈だが、しかしそれ以外にリョウコウとキリトがALOから消えた事を知る者はいない筈……
そんな事を思っていると、直葉はどこか大人びた微笑みで此方を見ながら言った。

「フレンドリストから二人が消えてる事、あたしが気づかない訳無いでしょ」
「んな、無いでしょってなぁ……」
「あ、あぁ。リストなんて、そんな毎日見るもんじゃ……」
「見なくても、感じるもん」
はっきりと言いきった直葉に、涼人は呆れとも感嘆とも……そして嬉しさともつかぬ感情を抱く。自分の勘が、直葉にもうつったのだろうか?否。あるいは……

それから、直葉はぽつぽつと語った。
昨日の夜、リョウコウとキリトがフレンドリストから消失している事に気付いた事。
すぐに和人の部屋に突撃を掛けようとして、しかし和人や涼人が自分に何の相談も無くALOから消えるなどあり得ないと思い直し(こう言った妹の信頼は兄二人としては本当に嬉しく、照れくさい)、先に明日奈に連絡を入れ、今回の依頼について聞いた事。

「……そう、か……」
コンバートした事の後ろめたさか、直葉から目を逸らす和人と、頭の後ろを掻く涼人の前で、直葉がカタン。と小さな音を立てて立ちあがる。
机をはさんでいては、分からない事もあると悟ったのだろうか?そのまま彼女は、ゆっくりと和人の後ろに付いた。しゃがみこむように和人の顔の横に自分の顔を寄せて、内包した不安を絞り出すように小さな声を漏らす。

「お兄ちゃん……」
囁き声の語尾が、少しだけ震えているのを涼人は敏感に感じ取る。

「アスナさんは、『いつもみたいに二人でGGOに行って、ちょっと暴れてからすぐ戻ってくるよ』って言ってた。でも、本心では不安に思ってるみたいだった。あたしもそうだよ……だって……だって、昨日遅くに帰って来た時、お兄ちゃん取っても怖い顔してた……りょう兄ちゃんだって……」
そこで、直葉は少しだけ言葉を詰めた。まるで、口に出すことを恐れるような……

「ほんの少しだけ……怒ってるみたいだった……」
「っ……!」
反射的、と言うべきか。和人は涼人の方を窺うように見た。
涼人は、苦笑して
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