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SAO─戦士達の物語
GGO編
九十八話 妹の不安
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何という虚しい抵抗だろうか。せめてもう少しマシな返し方は無かったのか。対して直葉は……

「似てるって言うか、全く同じだよね」
そう言って一蹴した。ちなみに顔は笑顔だ。超笑顔。

「…………」
その無言の笑顔で空気の圧力が増すのだから、全く、笑顔の可能性は無限大だと思う。

……とは言え、まあ別に和人と直葉や、或いは万に一つの確率で直葉と自分の間に喧嘩が勃発すると懸念している訳では、涼人とてない。
元々涼人と和人、或いは涼人と直葉はSAO前から仲が良かったし、この世界に帰還してからの一年間は、和人と直葉もそれこそSAO前は一体何だったのか(日の会話すら禄に無かった)と言いたくなる位に仲が良く、彼等の父親である峰高氏が拗ねてみせる程だ。

それにもし仮に弟妹喧嘩が勃発してしまったなら、涼人が止めれば良いだけの話である。
喧嘩ならもやしの和人は問題にならないし、直葉はまぁ……流石に高一からいきなりインターハイと玉竜旗の団体レギュラーに選ばれるだけの事もあって、体力面だけならば普段からある程度のフィジカルトレーニングを積んでいる筈の涼人に勝るとも劣らない。
が、残念ながら「喧嘩」と言う枠組みになれば、その特有の“何でもあり”な戦い方をよく理解して居る涼人に勝つことは不可能だ。無論、彼女の土俵である剣道となったらこれはもう涼人は竹刀にシーツでも括り付けて振らねばなるまいが。

「……ま、まあ、同じかな、ウン」
と、和人は相変わらず虚しい抵抗を続けているようだった。
無理がある態度でコピー用紙から目を逸らし、プチトマトを口の中に放り込む。

「で、でもまぁ、ありがちな名前だしな。俺だって本名の省略なわけだし、きっとそのGGOキリトくんも、きり……霧ヶ峰藤五郎とか、そんな名前なんだよ。ウン」
クーラーか時代劇かよと突っ込みたくなったが、やめておいた。今は余計な口は挟まない方が良い。と、視界の端で斜め隣の和人の瞳に、恐らくは最愛の妹に明らかな嘘を付いて居る故であろう罪悪感の光を見止めて、涼人は少しだけ陰鬱とした気分になる。
何故和人や涼人が直葉に今回の事を隠すのかと言われれば、第一に、ALOから自分達がコンバートした事を彼女に伝える事で彼女を傷つける事が躊躇われたからだ。そして第二に、それを打ち開けたとしてその理由を問われれば、自分達は彼女にそれを打ち開けなければならないだろう。とは言え、今回は人死にがかかわっている事件である。流石にそうそう直葉に全てを打ち開ける気にもなれない。
まして、SAOにおける自分達ラフコフの因縁に、彼女を巻き込むなど論外だ。
軽いシスコンは二人して自覚済みだが、しかしそこを譲る気には矢張り二人ともなれなかった。

と、そんな幾つかの思考を、直葉の小さな声が遮った。
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