GGO編
九十八話 妹の不安
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と大きなオーブントースターにぶち込んで摘みを捻る。ヴーンと言う独特の唸るような稼働音と共に、内部がオレンジ色の光を放ち出した。
「荒れるかもなぁ……」
楽な依頼かと思えばこれだ。自分や和人の巻き込まれ体質に辟易としながら、涼人は一人呟いた。
――――
「おにーいちゃんっ」
さて、それから数時間が経ち、昼飯時。
和人と直葉が買い物から始めて作った本日の昼食であるシーザーサラダとシーフードピラフをがっついて居ると、一部の……戸籍上同一の一家に分類され、自身が第一子や二子で有る場合にそれ以下の欄に子供として記載される女性。を非常に好む方々が聞いたなら卒倒しそう(勿論喜びで)な言葉を発し、とびきりの笑顔を浮かべながら和人の方を向いた彼女に対して、明らかに顔の端がピクリと引きつった和人は、恐らくは自身の日頃の行いがお世辞にも良いとは言えない事を自覚しているのであろう。ピタッとミニトマトを口に運ぶ手が止まった和人を視界に収めつつ、しかし涼人は何も言わずにもう一口を口に運ぶ。
「と……突然なんだよ。スグ?」
明らかにどもっている物の、ひとまず平常心な顔(少なくとも、本人はそのつもりの筈だ)で返した和人に対して、彼の向かい側。涼人から見ると右側に座る直葉は自分の右隣の椅子から一枚の……ちょうどA4サイズのコピー用紙を取り出して、和人に見せた。と言うか突き付けた。
「あのね、あたし今朝、ネットでこんな記事見つけたんだけどね?」
チラリと見ると、それはどうやら現在日本最大のVRMMO総合情報サイトである、《ニュー・ワールズ・ストーリー》……略称を《ニュース》と言うのだが(ちなみに、MMOプレイヤーの間では最早テレビや新聞のアレよりも先行していたりする)、それのトピックスコーナーのハードコピーのようだった。
太字のラインには、[ガンゲイル・オンラインの最強者決定バトルロイヤル、第三回《バレット・オブ・バレッツ》本戦大会出場プレイヤー三十人決まる]と書かれている。爪を切りそろえた直葉の指は、その内の一カ所を差していた。其処に[Fブロック一位:Kirito(初)]と言う文字が書いてある。吐き掛けた溜息を飲み込んで、涼人は和人をチラリと見る。
しかしまあ有る意味当たり前だが、直葉のそれは和人だけで止まらなかった。
「ほら、りょう兄ちゃんも見て見て」
今度は涼人にそれを突きつけてくる。しかも指は別の場所を差していて其処には当然と言うべきか。はっきりと[Eブロック一位:Ryoko(初)]と記入されている。
「ん。おう」と気のない返事をして、ピラフに夢中になっているふりをすると、涼人はもう一度和人を見る、彼は相変わらず引きつったように笑うと……、
「へ、へえ。似たような名前の人が居るもんだなぁ」
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