第三章
[8]前話
「これでよしだ」
「希望は存分に働いています」
ヘラはそのゼウスに述べた。
「そうしてです」
「人間達を守ってくれているな」
「そして支えてくれています」
「何よりだ」
「左様ですね」
「人間に希望は必要だ」
ゼウスは今度は確かな声で述べた。
「だからだ」
「この度のことはですね」
「ヘルメスの知恵のお陰だ」
満足している顔での言葉だった。
「全く以てな」
「しかしです」
ここでアテナが父神でもある彼に咎める声で言ってきた。
「この様な回りくどいことになったのはです」
「わしのせいだというのだな」
「プロメテウスに子供の様な悪戯を仕掛けて」
そうしてというのだ。
「彼が怒って警戒する様になりましたから」
「回りくどくなったというのだな」
「全く。大人気ない」
「そう言うばああした澄ました賢い者を驚かせることがだ」
ゼウスは娘神にやや口を尖らせて返した。
「面白いのだ」
「それで悪戯をされたのですね」
「あの時はな」
「何度もそうしてきましたが」
「そなたにはその楽しさがわからぬか」
「わかりません」
むっとした顔での返事だった。
「お陰でこうした時に回りくどくなります」
「ううむ、そなたは相変わらず真面目だのう」
「しかしそうした後でどうすればよいかを考えるのも楽しいです」
ヘルメスはゼウスの側に立って話した。
「それに人間に希望が渡ったので」
「よかったな」
「そうかと」
「そうだ、それならよいではないか」
ゼウスはヘルメスの助け舟に乗って言った。
「万事解決だ」
「全く。反省しないのですから」
「困ったものね」
「本当にそうですね」
アテナはヘラの言葉に応えた。
「こうした子供みたいなところがあるから」
「困るのよ」
「どうにかならないでしょうか」
「この人はずっとこうだったからね」
「無理ですか」
「浮気の方もだしね」
ヘラはゼウスの好色さについても溜息混じりに述べた。
「本当に困った人よ」
「まさに天空の神ですね」
「気ままに何時でも変わるね」
「どうしたものか」
「そう言うな、では希望の活躍をこれからも見守ろう」
ゼウスは二柱の女神に言われても笑っていた、そうしてだった。
その言葉通り希望の活躍を見守った、希望は今も人間達の傍にあり彼等を守り支えていた。パンドラの箱の中にあったそれはあらゆる悪に勝っていた。
パンドラの箱 完
2022・1・17
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