第一章
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それ以上
その申し出を聞いてルイ十四世はまずは顔を顰めさせた。
「フーケが余を招いているか」
「はい」
王に述べた官吏は厳かに答えた。
「陛下には是非です」
「築いた城に来て欲しいというのだな」
「素晴らしい催しを用意されているそうです」
「あの者の有能さは認める」
王は顔を顰めさせたまま言った、王侯貴族としては小柄だが民達と比べると少し高い位の背で威厳に満ちた表情で豪奢な服と鬘が目立っている、だが今はその威厳に満ちている顔を顰めさせたままである。
「しかしだ」
「あのことですか」
「余はあの者が宰相の座を欲していることを知っている」
その野心をというのだ。
「そしてだ」
「あのことですか」
「金に汚く国庫を私していることもな」
このこともというのだ。
「知っている、だからだ」
「やがてはですか」
「首は切らぬが」
死罪にはしないがというのだ。
「しかしだ」
「それでもですか」
「やがて牢に入れる」
そう考えているというのだ。
「王としてあの留まらぬことを知らぬ欲は許せぬ」
「それが国の財を私しているので」
「そうだ、何時かは罰する」
そう考えているというのだ。
「そう考えている者に招かれるとはな」
「ですが大蔵卿は何としてもです」
官吏はその彼二コラ=フーケを役職から話した。
「陛下にです」
「わかっている、余は行く」
王は玉座に座したまま厳かな声で答えた。
「そうしてだ」
「宴にもですか」
「加わろう」
「そうされますか」
「それが例えあの男が世にその贅と権勢を見せるものであってもな」
「そして陛下にもですね」
「そうしよう、余は王である」
この国、フランスのというのだ。
「王は己の考えを時として封じなければならぬ」
「神のお言葉に従いですね」
「国を護り富をもたらすものだからな」
「そして今は」
「あの者の言葉を聞くべきである」
王としてというのだ。
「臣下の心を汲み取るのも王の務めだからな」
「それではですね」
「余はあの者の招きを受ける」
今確かな声で答えた、こうしてだった。
王はニコラ=フーケの招きに応じて彼が築かせたヴォー=ル=ヴィオンコ城に赴いた。その城を見てだった。
王の者は皆驚愕し声をあげた。
「なっ、これは」
「この様な城は見たことがない」
「何という豪奢な」
「そして巨大なのか」
「フランスにこの様な城があるとは」
「ミラノやフィレンツェにもないぞ」
「マドリードの宮殿にも匹敵するのではないか」
スペイン王家の宮殿であるアルンハルブラ宮殿にもというのだ。
「神聖ローマ帝国にもないぞ」
「当然イングランドにもだ」
「ここまでの城を築くとは」
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