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ウルトラマンカイナ
特別編 ウルトラカイナファイト part5
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……!)

 老紳士に扮していた時のテンペラー星人を、あの時に倒せていたら。そんな思いが過ぎる度に、尊はその頬に雫を伝わせ、血が滲むほどに拳を握り締めていた。

「覇道さん、誰を責めても仕方がないことはあります。自分独りで背負い込むのは、もうやめにしましょう」
三蔓義(みつるぎ)先生……」

 その時。わなわなと震えていた尊の手に、部下達の主治医――三蔓義命(みつるぎみこと)の手が重なる。

「幸い、この方々も命に別状はありません。僕達も彼らに負けないように、今出来る最善を尽くしましょう。……助かった人には、助かった人にしか出来ないことがあるはずです」
「……!」

 鞘を握る手の震えを鎮め、嗜めるように語り掛ける命の言葉に、尊はハッと顔を上げる。眼前の鏡には、自分自身の悲痛な貌が映り込んでいた。

『その顔はなんだその眼はなんだ、その涙はなんだ!? お前の涙で、この地球が救えるのか! 牙無き地球の人々は、それでも必死に生きているというのに! 牙を持ちながら挫ける自分を、恥ずかしいとは思わんかァッ!?』

 3年前、ウルトラマンとして怪獣や異星人達と戦い続けていた頃。尊は何度も侵略者達に敗れ、何度も挫けそうになっていた。

(レグルス師匠……)

 そんな自分を、苛烈なまでに厳しく指導していた師匠――「ウルトラマンレグルス」の言葉が、脳裏を過ぎる。今の自分の貌は、その言葉をぶつけられた時のような酷いものであったということに、尊はようやく気付いたのだ。
 消えかけていたその眼の炎が、かつての勢いを取り戻していく。側で彼の「変心」を見守っていた命も、その心境を察しているようだった。

「……三蔓義先生、ありがとうございます。今、ようやく思い出せました。俺が何者なのか。そして今、何が出来るのかを」
「そうですか……それは良かった。さぁ、ここは僕に任せてください。あなたは、あなたに出来ることを……お願いします」
「はい……!」

 昏睡状態にある部下達を一瞥して。尊は命に一礼すると、涙を拭い病室を後にする。闘志に満ちたその背中を、命は静かに見送っていた。

 やがて病院の外へと飛び出した尊は、街の惨状に唇を噛み締め、ウルトラエナジーソードの鞘を握り締める。すでに上空では、「イカロスの太陽」により発せられた人工のウルトラサインが煌々と輝いていた。

「これ以上、お前達の思い通りにはさせんッ! ウルトラマンッ……エナジィィィイッ!」

 そして、地球を救うウルトラ戦士としての使命を完遂するべく。勢いよく鞘から抜刀した彼は、絶叫と共にその切っ先を天高く掲げるのだった。

 刹那、尊の全身を眩い輝きが飲み込んで行き――剣を中心に広がっていく閃光が、ウルトラセブンを彷彿とさせる「真紅の巨人」を形成する
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