第二章
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「貴女芸能界に興味ある?」
「えっ?」
「貴女ならすぐにデビューしてトップになれるわよ」
「あの、うちの娘ですが」
背が高く雪代に似た顔と理恵の髪の質の父が言った。
「まだ小学生ですが」
「えっ、嘘ですよね」
「嘘じゃないです」
小柄で理恵の顔と雪代の髪の質の母も言った。
「この娘十二歳です」
「高校生じゃないんですか」
「小学生ですよ」
こうその女性に言うのだった。
「本当に」
「そうは見えないですが」
「ですが本当にです」
「そうですか、うちの事務所は子役の子は採用しないんで」
「そうなんですか」
「すいません、これで」
一家に頭を下げて去った、その彼女の後姿を見てだった。
理恵は声をかけられてまだ固まっている妹にだ、こう言った。
「まあこういうこともあるわ」
「そうなの」
「気にしないことよ」
「このこともなの」
「そうよ、大きくなったら何でもなくなるから」
「中学生になったら?」
「高校になってもね、だから気にしないことよ」
「だったらいいけれど」
「私なんかいつも小学生って言われるから」
その背と童顔故にだ。
「いいわね」
「それでなのね」
「そう、こんなことあっても気にしないことよ」
「そうなのね」
「じゃあ帰りましょう」
両親と一緒にとだ、理恵は雪代に言ってだった。
買いものも食事も終わっているので帰路についた、それからもいつも雪代の方が姉と言われ続けていたが。
雪代はやがて一七〇近い背になり大学を卒業するとブティックで働き理恵も大学を卒業して小学校の先生になったが。
「六年生の担任になったらなの」
「生徒の殆どの子が私より大きいのよね」
実家の法事の時に妹に話した。
「これがね」
「そうなのね」
「ええ、背のことは気にしてないけれど」
「それでもなのね」
「少し嫌になるわ、制服着たら生徒にしか見えないともね」
中学の時より五センチ位伸びている、それでも小さくて言うのだった。
「言われるわ」
「そうなのね」
「このことは困ってるわ、今も姉妹あべこべの外見で職場でも言われるとね」
こう言うのだった、だが。
二人共法事の時はビールを何リットルも飲んだ、そのことは同じだった。姉妹仲良く飲むが絆も子供の頃と同じだった。
小学生に見えない 完
2022・2・23
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