勇者、始動。
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シア様が人類のために齎《もたら》された教えであり、当然その内容を忘れることなどありえない。
「第二項。魔族は人類にとっての敵であり、神に背く害悪である」
「第三項。人に生まれたならば必ず正義を為すべきである」
「第四項。穢れなき魂は、死後救済の地へと導かれる」
僕は聖典の内容を一通り読み上げ、座学を終える。
軍では僕に、かなり多くの時間聖典の学習をさせた。
恐らくまだ子供だった僕に正しい感性を植え付けるために行ったのだろう。
軍に来たばかりの僕は本当に無知だった。人類を導いて下さる聖典すら碌に知らなかったのだから。生きる目的すらなく、ただ茫然と日々を過ごしていた。だが今は違う。僕はもう、神を知っている。それだけで十分だ。
そして戦闘訓練、つまり神に背く害虫である魔族を直接殺すための訓練が始まるのだ。僕は部屋を出て訓練場へと向かう。
訓練場、といっても座学をしていた部屋の庭のような場所で、木刀を取って振りかざし、風を切りながらひたすら素振りを続ける。
僕には魔族に対して威力を発揮する光魔法を扱え、さらにはそれを使えるのは僕ただ一人だけだ。
そうしている内に数時間は経過しただろうか。
だが、まだまだ手を休めるわけにはいかない。
僕には使命がある。聖典が示す正義の為に人類に栄光に導かねばならない。
光魔法を扱える僕にしかできないことだ。
無駄な時間など存在させず、疲労だって意に返さず、常に最善を尽くす。
ーもっと強くなるんだ。神に背く害虫共を蹴散らす、その時まで。
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魔王が問う、なぜ戦うのかと。
そんなもの、答えは決まっている。
記憶を引っ張り出すまでもないことだ。
「いや、そりゃあ、だって...」
「聖典に書いてあるからだよ」
そう、少年はさも当然のように答えた。
それから戦いが始まり、魔王は討伐された。
「勝った、のか」
神に背く害虫共の頭である魔王を倒したことで少し気が緩んだのか、体が重くなる。
きっと疲れが溜まっていたのだろう。
そのまま僕は気を失った。
次に僕が目覚めたのは断頭台の上だった。
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