祭祀礼装・禊
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刺さる千鳥の突き技。それは、縦に五回。横に五回。十字を描くように刻まれた刃が、どんどんヤマタノオロチを刻み込まれていく。
「せいやっ!」
やがてそれは、実体を持つ軌跡となる。さらに、最後に中心へ行われた突き。すると、十字の刃跡は集約され、より大きな一撃となる。
___それはかつて、剣好きの少女が可奈美へ託した技でもあった___
「だああああああああああああっ!」
最後の一撃。
それは、ヤマタノオロチの頭部を破壊しながら、その肉体を吹き飛ばす。
これまでヤマタノオロチの進軍を全てゼロにする威力。封印されていた箇所に転がったヤマタノオロチは、再生しながらも動きが鈍っていった。
そして。
可奈美の十一連撃。それが開いた、人が入れるほどの大きなヤマタノオロチの亀裂に、見えた。
「美炎ちゃん!」
ヤマタノオロチ、その一か所を指差した。
可奈美の刃が入れた、無数の刀傷。みるみるうちに治癒していくが、そのうち八つの首の根本の一か所。
その中に。
「コヒメちゃんは、あそこにいる!」
可奈美の輝く目は捉えていた。
今にもヤマタノオロチと同化しようとしている白い少女が、全身を縛られていることを。その体内奥深くに、コヒメが銀の人物と対峙していたのだ。
「分かった!」
美炎は躊躇いなく、跳び上がる。
炎を足元に爆発させながら、一気に急上昇。折り重なるヤマタノオロチの肉体を切り裂きながら、その上を取る。
「煉獄さん……力を貸して!」
美炎は、構える。空中で体を屈め、加州清光を大きく引き込む。すると、漆黒の鎧の下に、紅蓮の炎が迸っていく。炎は全身に行き渡り、やがて髪がふわりと浮かび上がった。
それはまさに、セイバーのサーヴァント、煉獄杏寿郎の技と同じ動きだった。
「全集中 炎の呼吸!」
そして、放たれる彼の技。
可奈美には、もはや彼女のすぐ後ろに、煉獄杏寿郎の姿さえ見えた。
「奥義! 煉獄!」
彼女の体内を走る炎の血流。それは全身に行き渡ると同時に、一撃を放つ。
それは、煉獄の奥義と同じ動き。龍のごとく舞い上がったそれは、八体の蛇の首を弾き飛ばした。
「決めるよ!」
まだ、美炎の動きは止まらない。
炎を足元で爆発させ、一気に加速。ヤマタノオロチの首たちを切り刻みながら、中心核へ迫る。
そして。
「わたしと清光の! 全力!」
無数の蛇の顔たち、一つ一つに、斬撃を与えていく。
そしてそれは。
その巨大な肉体に刻んだ切り口より、その体内に飛び込んでいった。
可奈美はそれを見届けて、一人呟いた。
「気を付けてね。美炎ちゃん……」
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