暁 〜小説投稿サイト〜
冥王来訪
第二部 1978年
ミンスクへ
青天の霹靂 その3
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いた話だと『光菱重工北米事務所の販売員(セールスマン)』という事でした……」
篁が、そう呟く
ミラとの逢瀬の件が、殿中はおろか、禁裏(きんり)に迄、露見していたのも件の人物と接触していたのが有るのかもしれない
己が、脇の甘さを恥じた
「北米担当が何で西ドイツに居る。おかしいではないか」
大柄な職員が、篁に問うた
仕立ての良い両前合わせの背広を着て、立つ男はまるで壁の様に見えた

 侃々諤々(かんかんがくがく)の議論が起きている様を横目で見ていたマサキは呆れた
彼は、弁明する巖谷等の話を聞き流して、懐中に手を入れる
『ホープ』の箱からタバコを取り出すと、火を点ける
そして近くにあった椅子に座ると、独り言を言った
「随分と雑な素破(すっぱ)だな。
五摂家の何某(なにがし)が関わってると暗に認めているようなものではないか」
周囲の気を引く発言をわざとして、秘密を聞き出す算段であった

「何がしたい」
誰かが、そう言った
彼は、その男の声を聴きながら返す
「俺を道具のように扱う将軍とやらもそうだが、その《翁》とかいう人間が気に入らん。
かき回すだけ、かき回して、意味不明な言動をする。
貴様等に問いたい。その爺はどれ程の人物で、なぜお前らは恐れるのだ。
そんな耄碌(もうろく)なぞ、座敷牢にでも押し込めれば良かろう。
違うのか」
周囲を一瞥する
一様に押し黙っている所を見ると、かなり深刻な話題の様だ
これ以上、関わるのは得策では無かろう
彼は、この件に関しては諦めた
「大方、その素破とやらも、例の爺が用意した物であろう。
一つ言っておく。
大がかりな仕掛けを用意して、俺を弄繰(いじく)り回している様だが、どの様な結末になるか。
ペルシアにある化け物の巣穴を焼く様を見るが良い」
右手の食指で、声のする方を指差す
「そしてその事を一言一句、(たが)えず、その耄碌爺に伝えて置け」
彼は勢いよく、立ち上がる
「一寸ばかりペルシアへ飛んでくる。
何、気分転換のドライブだ」
そして、冷笑をしながら後ろを振り向く
「無駄な被害を出したくなければ、CIAのテヘラン支局にでも電話して置け。
ホラサン州から兵力を極力下げる様にとな……」
彼は、出口の方に踵を返すと、ドアを開ける
呆然とする職員達を目の前にして、其の侭部屋を後にした
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