第二部 1978年
ミンスクへ
青天の霹靂 その3
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基地には不相応の姿格好
まるで決まりきったサラリーマンのような支度に不信感を憶える
彼は上着を押し上げ、ズボンのベルト右側に挟んであるインサイドホルスターに手を掛ける
私物の8インチの銃身を持つ拳銃をゆっくり取り出す
(1インチ=2.54センチメートル)
脇に居る美久にも目配せする
彼女の手には、米軍貸与の大型自動拳銃がすでに握られている
「動くな。ここをどこだと思っているんだ」
ゆっくり右手で構え、丁度ズボンのベルトのあたりに向けて照準を合わせる
左手を右ひじに添える形で保持し、撃鉄を上げる
男は、両腕をだらりと下げた侭、笑いながら足を止める
再び、彼女に目配せをする
銃を構えた右手を勢いよく天井に向けると、一発撃つ
倉庫内に雷鳴の様な爆音が反響する
強烈な音と吐き気を催すような耳鳴り
思わず顔を顰める
男は、猶も笑ってはいるが、若干顔色が悪くなった程度だった
「次は貴様を撃つ。両手を上げて、官姓名を名乗れ。
さもなくば、伏せて身動きするな。
俺の気は短いぞ……、忠告は一度だけだ」
男は敵意を無いのを示すように、両腕を腰のあたりまで上げる
掌をこちらに向け、止まる
「もっと上げろ、《万歳》の姿勢まで上げろ」
右掌を包むように左手を添え、拳銃を相手の顔面の位置まで上げる
拳銃の銃把を握りなおし、照門を覘く
.44レミントン・マグナム弾であれば、確実に殺せる
どけていた食指を用心金から引き金に移動させ、左目を瞑り、右目に照星を合わせる
「ほう、スミスアンドウェッソンのM29ですか。良い回転拳銃ですな」
男は日本語で、話しかけてきた
「減らず口を叩ける立場か、貴様。
俺は警告したぞ。手順通りやったから、後は逝ね!
美久、同時に仕掛けるぞ」
僅かに、顔を彼女の方にずらす
「貴方方が噂のアベックですか。
色々、先々で話は伺って居ますよ。
しかし素晴らしい戦術機ですな。
これほど大きなものを御一人で組み上げたとは、いやはや関心致しますよ」
彼は顔を顰める
「貴様、何処の間者だ」
男は、なおも笑みを浮かべた侭だ
再度彼女の方を見る
「火災報知器のベルを鳴らせ。
曲者だ」
彼女は、その場から素早く二発撃つ
爆音が響き、薬莢が勢いよく排出口よりコンクリート敷きの床に転がる
放たれた弾丸は、防火用の非常ベルの保護カバーを破壊し、警報が作動する
けたたましい騒音が鳴り、火災発生を知らせる無線が場内に響く
彼は冷笑する
「これで貴様は袋の鼠だ」
銃を構える彼女に檄を飛ばす
「おい!紐を持てい」
彼女は、其の侭、防災用品の入った棚へ向かう
彼の指示通り、捕縛するため
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