第四十一話 〆切を意識してその八
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「いいのです」
「そうなんですね」
「悪いのはやはり」
「終わらせないことですか」
「はじめることは非常に力を使い難しいです」
創作をそうすることはというのだ。
「ですが終わらせることもです」
「難しいですよね」
「はじめることと同じだけ」
それだけというのだ。
「難しいです、ですが」
「終わらせないと駄目ですね」
「はい」
何があってもというのだ。
「そうなのです」
「それが出来ないと創作しても駄目ですか」
「私はそう思います、ですから小山さんも」
咲を見て話した。
「どうか」
「今描いている作品を」
「完結させて下さい」
こう言うのだった。
「私からも言わせて頂きます」
「作品の創作をはじめたら」
「その時は」
「完成させることです、終わらせてこそですから」
「そうですね、ただ私は」
ここで咲は少し苦笑いになって話した。
「あの、あまり」
「あまりとは」
「はい、永井豪先生みたいな終わり方は」
「お好きでないですか」
「どれも壮絶過ぎて」
それでというのだ。
「読んでいて納得出来なかったので」
「だからですか」
「はい、ああした終わり方は」
「描きたくないですか」
「そう思います」
「無茶苦茶過ぎますね」
「どれも作品の世界が徹底的に破壊されて」
そうなってというのだ。
「終わってますね」
「何もかもが残らない」
「もう読んでいて唖然となる様な」
「そうした終わり方が殆どですね」
「あんな終わり方の作品ばかりって」
それこそというのだ。
「そうした人もそうそういないですね」
「そうですね、終わらせることは絶対ですが」
それでもというのだ。
「終わらせ方もです」
「問題ですよね」
「そうです」
その通りだとだ、速水はまた答えた。
「小説ですが太宰治や志賀直哉の終わらせ方はいいです」
「そうなんですね」
「太宰は志賀直哉を嫌っていましたが」
如是我聞という人間失格とほぼ同時に発表した彼の自殺する直前の作品で彼を批判している。そこで芥川の様に弱くなれとも言っている。
「終わらせ方はです」
「どちらもよかったですか」
「最後の一文がです」
それがというのだ。
「いいのです、特に太宰は」
「最後の一文がですか」
「いいので」
それでというのだ。
「非常にです」
「いいのですね」
「それで読み終わるとすっきりしますが」
それでもというのだ。
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