第四十一話 〆切を意識してその七
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「実は私の知る限りですが三作程未完の作品があります」
「そうだったんですね」
「バンパイアとです」
この作品は掲載誌が休刊しそれで中断したという、そしてそれから以後続編が描かれることはなかったがテレビ版では完結している様だ。
「ネオ=ファウストとルードヴィヒ=Bです」
「その三作品ですか」
「後の三作品は執筆中にです」
まさにその時にだ。
「お亡くなりになって」
「それで、ですか」
「病床でも描かれていましたが」
その原稿も残っている、死の床にあってもまだペンを手にしていたのだ。
「ですが」
「力尽きたんですね」
「そうなりました」
「それは残念ですね」
「その一生は不眠不休だったので」
「若くしてでしたね」
「還暦を過ぎて少し経って」
それで、であった。
「お亡くなりになって」
「その二つの作品もですか」
「未完となりました」
「それで途中までしか読めないんですね」
「私はそのことを残念に思っています」
「やっぱり完結させてこそですね」
「そうです、三島由紀夫は完結させてです」
ライフワークとしていた豊穣の海シリーズを終らせてだ。
「その直後にです」
「ああしてですか」
「行動を起こし」
「自決したんですね」
「時代がそうさせた生き様、死に様でしたが」
速水はその右目を遠くそして残念に思うものを漂わせつつ述べた。
「そうしました、これはです」
「いいことですね」
「あの行動は非常に残念でしたが」
「作品は完結させることですね」
「それが第一です、どれだけとんでもない結末でも」
それでもというのだ。
「終わらせることはです」
「第一ですね、じゃあ」
咲は速水に漫研で読んだこの漫画家の名前を出した。
「永井豪先生は」
「とんでもない結末が多いですね」
速水もこう答えた。
「その人は」
「もう何もかもが壊されるみたいな」
「私はあの人の作品は好きですが」
それでもと言うのだった。
「多くの作品の結末には納得出来ないものを感じています」
「やっぱりそうですよね」
「あの人はそうなのです」
「終わり方が酷いんですね」
「はい」
実際にというのだ。
「それもまた特徴の一つです」
「漫研の倉庫に沢山あるんですが」
この人の作品がというのだ。
「どれもです」
「酷い結末ですね」
「まともに終わった作品が」
咲が読んだ限りではだ、この人の作品も実に多い。
「殆どなくて」
「印象に残りましたか」
「かなり。ですが終わっているのなら」
「いいのです」
それならというのだ。
「例えああしたです」
「壮絶な終わり方でも」
「終わらせているのですから」
だからだというのだ。
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