第二部 1978年
ミンスクへ
青天の霹靂 その2
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ト中尉」
「彼は違いますよ、同志曹長」
脇からヤウクが口を挟む
軍医の表情が変わり始めたのが判ったのか、ヤウクは進んで医務室に向かった
その後を、彼等も追う
医務室で待っていたのは、顔色赤く怫然した政治将校と司令官であった
30分に及ぶ聴取の結果、カッツェが白状したのだ
ヴィークマンとは、既に男女の間柄に成っていた
帰国直後に、その様な関係へ発展したとの事
結果的に言えば、大騒動になった
未婚の男女が契りを結び、その上妊娠させた
今回ばかりは、司令官も庇いきれなかったのか、きつい叱責になった
経歴に傷がつかぬとの配慮から、一週間の《精神的療法》と言う事で謹慎処分
後日、ヴィークマンと共に双方の両親に挨拶に行き、式を挙げるという形に落ち着いた
第一戦車軍団司令部は、悩ましい結末に頭を痛めた
ベテラン衛士の脱落
しかも作戦開始までに、復帰は絶望的
ベルンハルト中尉とヤウク少尉は、方々へ足を運び、陳情しに回った
人探しをする様、各連隊や部署に懇願した
偶々、下士官から選抜された、ヴァルター・クリューガー曹長という青年を見繕ってくることで決着を得た
カッツェは、クリューガー曹長に頭が上がらないであろう
自分勝手な行動の結果、その青年を転属させたのだから
《一からの衛士育成》
ベルンハルト中尉は、中隊の執務室でタイプライターを打ちながら悩んだ
何れ、わが身の在り様も考えねばなるまい
ベアトリクスとの祝言も戦時と言う事で先延ばしにしていたが、同輩の過失を横で見ていると自制できるであろうか、不安になった
案外、ヤウクなどは5年でも10年でも待てるが、自分には自信がない
あの豊満で美しい肉体を思うと、正直夜も眠れぬ日があるのだ
アルミ製のマグカップに入った、冷めた代用コーヒーに手を伸ばす
不味いコーヒーではあるが、これしかない
薄い茶も質の悪い牛乳も飽き飽きするが、其れしかない
タバコなどを吸う司令やヤウクは経済的負担は大きかろう
ふと物思いに耽っているとき、ドアがノックされる
第一ボタンを閉め、居住まいを直す
「どうぞ、入って下さい」
ドアを開け、筋肉質で角刈りの青年が入ってくる
「失礼いたします」
曹長を示す階級章、襟にトレッセの付いた勤務服姿で逞しい肉体の男は彼に挙手の礼をする
彼も返礼をし、立ち上がる
「先日着任いたしましたヴァルター・クリューガー曹長であります。
同志中尉、よろしくお願いします」
彼等は、右手で固い握手を交わす
「同志曹長、私はユルゲン・ベルンハルト中尉だ。
今後、よろしくお願いする」
壁時計を一瞥する
「失礼ではあるが、執務中故、後日詳しい話は伺おう」
「了解しま
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