第2部
エジンベア
ミオの挑戦状
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いつになく厳しい口調でビビアンは言い放った。普段アルヴィスとはしゃいでいる彼女とは雰囲気がまるで違う。
「あなたもユウリ様と結婚したいのかしら? だったらそうおっしゃれば良いのに」
「だーかーらー!! 違うって言ってんでしょ!!」
全くお門違いの返答に憤慨するビビアンの肩を、後ろからアルヴィスがポンと叩く。
「ビビアン。子供相手にムキにならないの。それに、彼女のように王族や貴族同士の結婚ていうのは、自分の意思が尊重できるとは限らないのよ」
「え?」
「自分の家の地位を守るため、好きでもない人、もしくは会ったこともない人と突然婚約することなんてザラにあるのよ、こういう世界では。所謂政略結婚てやつね」
そう言って、寂しそうにヘレン王女を見下ろすアルヴィス。その姿は、かつてユウリのお父さんと共に世界を旅していた頃があったように、私たちの知らない彼の側面が垣間見えた気がした。
「けど、だからってユウリくんの気持ちも蔑ろには出来ないわよね。だって彼は貴族でもなんでもないのだから」
その言葉に、自然と皆の視線がユウリの方に注がれる。だが今の彼は、普段の自信に満ちた様子はどこに行ってしまったのか、ヘレン王女にただ振り回されて困惑しているようにしか見えない。はっきりと口に出してはいないが、少なくとも婚約と聞いて喜んではいないのはわかる。
「何を言ってますの? 第一王女との結婚なんて、世の殿方なら嬉しいに決まっておりますでしょ? なんたって、次期女王であるわたくしの夫であり、王配となれるのですから!!」
ただ一人気づいていないのか、自信たっぷりにそう言い放つヘレン王女。おそらく彼女……というかこの国の人たちの価値観がそういう風に出来ているのだ。王族との結婚と言うだけで、きっとそれは歓喜するべきであり、名誉なことなのだろう。
だけど、今のユウリの様子を見ると、それとは余りにもかけ離れている。そんな彼をこれ以上見るのが辛くて、思わず私は口を開いた。
「でも、優勝しないと婚約できないんですよね? 王女様には申し訳ないですが、優勝するのは私なので、ユウリとの婚約は諦めて下さい」
『!!』
途端、周囲の雰囲気が一瞬で凍りつく。
「まあ……。あなた、大人しそうな顔をして、随分余裕ですのね」
同時に、先ほどまでの年相応の愛らしい笑顔をした王女の表情に、陰影が差した。微笑んではいるが、目は笑っていない。その挑発的とも取れる笑顔に、怖れと同時に使命感のようなものを感じた。口に出してしまった以上、ここで引くわけには行かない。
「私も、この日のために頑張ってきたんで。絶対に、王女様には負けませんから!!」
まるで叩きつけるかのようにそう言うと、王女様も負けじと私を睨み付ける。
「ふっ、受けて立ちますわよ!! ライバルはそのくらい強気でないと張
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