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冥王来訪
第二部 1978年
ソ連の長い手
首府ハバロフスク その2
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場所に散歩という形で誘った
ここならば、間者が潜んでいても盗聴も不十分
念には念を入れての対応であった
 ハイム少将は、男に意見を伺う
「同志大将、ソ連の対応ですが……」
男は不敵の笑みを浮かべる
「話は聞いている。いずれにせよ、ソ連は持たん。
学徒兵に及ばず、徴兵年齢をこの三年で3歳下げた。
1941年と同じことを連中はしている……」
シュトラハヴィッツ少将は、不意に男の顔を覗き込む
深い憂いを湛えた表情をしている様を時折見せる男は、続ける
「ルガンスクで見た、凍え死んだ少年兵の亡骸は、未だに夢に出てくる……」

 サンスーシ宮殿の庭園を歩きながら話した
ふと立ち止まり、天を仰ぐ
「貴様達には初めて話すが、俺は先の大戦のとき、国防軍に居たのは知っていよう。
第3装甲師団で装甲擲弾兵……、准尉の立場でウクライナに居た」
 男の独白に狼狽えた
聞く所によれば、ソ連での3年間の抑留生活を過ごしたと言う
その様な人物が、他者に内心を打ち明ける
「我々の軍隊が駐留したウクライナ……、ソ連有数の農業地帯なのは知っていよう」
顔を下げると、彼等の周囲を歩き始めた
「嘗てヒトラーとステファン・パンデーラの圧政によって国土の大半を焼いて人口の半分を失った……。
それは半分あっていて、半分は嘘だ。既にそれ以前に尊い人命が失われた。
俺は、この目で見てきた……」
 石畳の上に長靴の音が響く
磨き上げた黒革の長靴に、朱色の側章の入った乗馬ズボン
軍帽に東ドイツの国章が入っていなければ、まさに分裂前のドイツ国防軍人と見まがう姿
彼等は、黙って男の姿を見ていた
「40有余年前、スターリンは外貨欲しさに、やくざ者やチンピラを集めて『貧農委員会』という組織をでっち上げた。
奴等を指嗾(しそう)して村落を荒らし回った……。
翌年の種籾はおろか、婦女子の誘拐や資産の強奪迄、行った」
厳しい表情で、彼は続ける
「歴史的にみれば、今の西部ウクライナは勇壮な有翼重騎兵(フサリア)を多数抱えたポーランド・リトアニア公国の一部だった。
そんな彼等をスターリンは恐れた」
懐中よりタバコを取り出し、口に咥える
再び立ち止まると、右手で火を点ける
「日本軍が満洲より兵を動かすことを恐れ、極東より師団を動かすのを躊躇ってモスクワは落城寸前までいった。
あの時、米国からの大量援助(レンドリース)と季節外れの大寒波が無ければ、クレムリン宮殿には三色旗が翻って居たであろう事は想像に難くはない」
右手の親指と食指でタバコを挟み、此方を見る男
「積年の思いというのは……、そう簡単には消えぬのだよ」
男の瞳は、何処か遠くを見るような目で、黄昏を見つめる
「同志大将……」
この男は、前の議長の新任厚く政治局員にも推挙された人物
先年、ポ
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