”炎”
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殺と記された刀を見下ろす可奈美は、その手をギュッと握った。
黒い刀身に、赤い炎の模様が描かれた刀。しばらくそれを見下ろしていると、やがてその刀が深紅の輝きを満たしていく。
「……え?」
日輪刀を形作る輝きは、やがて短くなっていく。それは、可奈美の体……その、刀使としての能力に適応していく。
可奈美の写シを吸収していくように、それはだんだんとエネルギーを蓄えていく。
「これは……?」
鈴祓い。
神社で使われる祭礼具。赤い持ち手の先には無数の鈴が幾重にも重なっている。だが、煉獄の刀が変化したそれがただの道具であるはずがない。
それを握った可奈美は、しばらくして千鳥を持つ手で顔を覆う。途端に、鈴祓いの音が頭に響いてくる。やがて、可奈美の脳裏には、見知らぬ姿が浮かび上がって来た。
「……っ! これは……!」
煉獄もその様子を見て左目を大きく開いていた。だが、やがて柔らかくほほ笑んだ。
「どうやら日輪刀も、衛藤少女を認めたようだな」
煉獄の手が、可奈美と美炎の肩を掴む。
そして。
「後は頼んだぞ。あの荒魂の少女も。そして、これからの未来も」
「……はい」
「うん」
強く。だけどどこか、弱々しく。
可奈美と美炎は頷いた。
そしてそれを見た煉獄は、ニッコリとほほ笑み。
可奈美と美炎。そして、その背後に位置する誰か___幻覚を見ていたのか___へ、満面の笑みを浮かべて。
今回の聖杯戦争における、最強の剣士。あらゆる聖杯戦争において、重要な役割を担ってきたセイバーのサーヴァントは。
その炎の目を、永遠に閉ざした。
「煉獄さん? 煉獄さん!」
美炎は、大声でその名を叫ぶ。
だが、眠るように目を閉じた煉獄は動かない。
彼の命の炎が途切れた。それを証明するように、美炎の手に刻まれた令呪が、みるみるうちに薄くなり、消えていくのが見えた。
可奈美は口をきっと結びながら、美炎の肩を叩く。
「美炎ちゃん」
「だって……わたし……! 煉獄さんに、大変なことを……!」
「美炎ちゃん!」
可奈美は叫ぶ。
「煉獄さんが言ったでしょ? 私たちは、今ここで、未来を守るためにも戦わなくちゃいけないんだよ!」
「可奈美……」
美炎は可奈美と、そして目を開かない煉獄を交互に見やる。
やがて、煉獄の体から、輪郭が失われている。その体はだんだんと粒子のように消えていく。
「信じるって、言ってくれた……だったら、私たちは、それに応えよう!」
「可奈美……」
虚ろな顔で、可奈美を見上げる美炎。今の彼女の姿は、先ほどからほとんど変わっていない。異形の眼差しを宿す髪、黒く変色した腕。同じく黒い着物と注連縄という、
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