第二部 1978年
ミンスクへ
乱賊
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…
この数年来、手に入れにくい柑橘類のデザートを食す
人払いをするように従卒に申し付け、茶飲み話になった
雑談を楽しんでいる最中、不意に男は問うてきた
「ソ連が進めていたオルタネイティヴ3とかいう無用の長物が有ったろう。
あの研究施設が、何者かに吹き飛ばされて、今モスクワの連中が責任の所在を巡って揉めてる。
愚にも付かぬ事であろう。諸君」
ベルンハルト中尉は、男に、この度の会談の真意を訪ねた
「まず、ご発言お許しください。
僭越ながら、今回の件と何の関係が有るのでしょうか……」
男は、花柄の模様の付いたコーヒーカップを机に置くと、応じる
「KGBの特別部隊が我が国に入ったとの情報を得た。
其の事は、今回の件とは無縁ではない」
机より、フランスたばこの『ジダン』を引き寄せる
箱より一本抜き出し、火を点け、周囲に居る彼等に告げる
「俺を気にせず、タバコ位吸え。
暫し、長い話になるのだからな」
彼の言葉を聞いた後、灰皿を置く
大臣とヤウクは、それぞれタバコを出して吸い始める
紫煙を燻らせながら、暫しの沈黙が生じた
脇で、その男の様子を見ていた大臣が、言葉を選びながら、答える
「同志ヤウク少尉、同志ベルンハルト中尉が、風変わりな日本人と話していたのを覚えているであろう」
彼は、問うて来た大臣に対して頷く
「その日本人の名前は、木原マサキ。
彼は、大型機の設計師であり、操縦士なのだよ」
その場に、衝撃が走る
「私がアルフレート、いや、同志シュトラハヴィッツ将軍から聞いた話によると、だな。
KGBが、その日本兵をソ連大使館に誘拐。
密かに国外に連れ出し、ソ連に抑留する計画があると……、言うのだ」
大臣は、丸めた紙を広げる
「最初は、俄かに信じられなかったのだが……」
男は、重い口を開いた
「一寸ばかり、同志大臣に走って貰って、面白いものを持って来てもらった。
君達には少しばかり過激な内容かもしれんが、ぜひ目を通してほしい」
キリル文字特有の、波の様な筆記体
ソ連留学経験のある彼等には、理解するのは造作もない事であった
手紙の内容は、ソ連科学アカデミーが、オルタネイティヴ3の失策を取り戻す為、新型戦術機の設計者である木原マサキを誘拐する旨が記されていた
ベルンハルト中尉は、その様な私信を怪訝に思う
「これは……」
ヤウク少尉も、彼に同調する
「本当ですか」
男は、彼等の疑問に応じる
「シュトラハヴィッツ君宛に出された、赤軍参謀総長の直筆の手紙だ」
新しいタバコに火を点けながら、続ける
「彼は、先のチェコ事件(プラハの春)の折、手紙を書いて寄越した参謀総長と面識を
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