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『外伝:紫』崩壊した世界で紫式部が来てくれたけどなにか違う
かくしてアイドル対決は、阻まれる(前編)
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顔を僅かに傾ける。
その瞬間葵の顔のすぐ横を何かが突っ切り、グールの腹にくい込んだ。
それはやつの身体を蝕み、そして塵へと変えると風に流れて消えた。
「葵様、このモノ達はただの生きた屍ではございません!」
グールに綴った文字を撃ち込み倒したのは紫式部。
彼女は葵の傍に経つと、アイドル衣装からいつもの洋装へと霊装を瞬時に変えて戦闘態勢に入った。
「かつて見たものとは大きく異なります。彼らは…生きていながら死んでいる…強力な呪術によって魂を縛りつけられ、操られているのです…!」
「なにそれ…」
グールではない、何か。
強力な呪術によって作られた傀儡。
そしてそれらは、一体だけではない。
「あれは…!」
遠くの方から見えるのは、人の群れ。
同じように生きた屍にさせられた、傀儡の群れ。
それらが呻き声を上げながらゆっくりと、しかし確実にこっちに向かってきている。
「へカPとソフィーは!?」
「連絡がありません。あの二人があのようなものに負けるとは到底思えないのですが…。」
「仕方ない…やるっきゃないか!」
ヘカPとはインカムで裏方から連絡が取れるようになっているが、生きた屍が現れてから何の連絡もない。
確かに、紫式部の言う通りあの二人は相当の実力者であり、あれらにやられたとは考えにくい。
きっと彼女らはこの状況にいち早く気付き、何とかしようとしているのだろうと願い、とにかくここは二人で打破するしかないと決意した。
「アテにしてるよ。香子。」
「ええ。香子は葵様のサーヴァントですので。死なせることは絶対に致しません。」
紫式部が筆をかまえ、葵が彼女を守るようにして前に出る。
サーヴァントとマスターのあり方としては逆かもしれないが、これが二人のやり方だ。
敵はそう簡単に死なないが、こちらには対魔性のスペシャリストがいる。
しかし、呪術で人工的に生み出されたグールということは、それを作ったもの、操るものがいるということ、
このライブを狙い、悪意を持って生きた屍をけしかけた者がいる。
どういった悪意を持ってこのライブを阻もうとしたのか、それを考えようとしたが今やるべきことは頭よりも体を動かすこと。
後ろには大勢の観客、周囲からは大量の屍。
引く訳にはいかない守るための戦いが、ライブの最中強引に始められた。
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