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短編 FATE/Zero hide of moonlight
動き始めた運命
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『−−−−ッ!』


 暗闇の中、誰かが自分の名を呼ぶ声が聞こえる。何度も何度も力強く、泣きそうな声が、自分の鼓膜を震わせる。


『−−−−ッ! お願いです、目を・・・目を開けて下さい!』


 この声を自分は知っている。最も自分が信頼し、敬愛している少女の声だ。何時は凜とした綺麗な声音なのだが、今の彼女の声は悲痛を含んでいた。


『−−−−ッ!』

「・・・聞こえ、てるよ」


 再度呼ばれる声に、返事を返しながら、開けるのも億劫な瞼をゆっくりと開ける。
 視界に入ってくるのは、煙が立ち上がった灰色と、夕焼けが混じっている空。そして自分を抱え、名前を呼び、泣くのを我慢しているように見える黄金色の髪をした少女。


「・・・もう少しで医者が来ます。 だからもう少しの辛抱です」


 ホッと安堵した表情を見せた彼女の頬には血が付いていた。
 返り血を浴びたのか。彼女の頬に付いた血を、感覚が薄れ震えている右手でそっと拭う。
 その様子を見た彼女は、その表情を再び変えて、悲痛に歪む。


「そんな・・・泣きそうな顔、しないでよ」

「・・・っ! 私の、私のせいで・・・!」


 目尻に涙を溜め、唇を噛み締めながら彼女は心から懺悔するように告げる。強く噛み締めたのだろう。唇からは血が流れていた。


「そんな事、言っちゃ・・・ダメだろ?」

「ですが・・・!」


 悲痛に叫ぶ彼女。
 その姿を見みて、少し、不謹慎ながら笑みがこぼれる。
 本当に昔から君は頑固だった。真面目で律儀で、責任感が誰よりも強い。だからこの事も誰よりも自分を責める。
 それを見ていて悲しくもあり、愛しくもあり、またそれ以上に何も出来ない自分を殺したくなった。


「フゥ。最後、くらい・・・笑って見せて・・・欲しいな」



 ゴホッ、ゴホッ。と咳き込み、血を出しながら冗談を言うように笑みを浮かべる。
 それに対して真面目な彼女は、怒鳴るように言葉を吐いた。


「貴方は何を・・・何を言っているのですか!?」

「ハハハッ・・・ゴメン。でも、ホントに・・・何時も、そう思ってた、から・・・さ」


 苦笑い混じりに言葉を零す。 君は剣を抜いたあの時から、余り笑わなくなった。涙でさえ、自分の立場の所為で人前では流さなかった。
 それを見るのが辛かった。だって君は・・・。



「・・・っ! どうして何時も貴方は・・・!?」

「君は、女の子だから。心配・・・なんだ」


 彼女と話しながらも視界と意識は少しずつ薄れて無くなり、身体中全ての感覚が消えていく。
 本当は死ぬのが怖い。彼女を残して行くのが辛い。もっと側にいたい。

 −−−だけど
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