第116話『夜の魔術師』
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散らす月は、そんな終夜を見て微笑みながら言った。
「でも、あの頃とは違う。そうでしょ?」
「はい……って言いたいところですけど、ちょっと前にまた暴走しちゃって」
「え、あんたまだ制御できてなかったの? それおねしょの癖が治らない子供と一緒よ?」
「その喩えめちゃくちゃ嫌なんですけど」
いい話風にまとまるかと思いきや、先日の裏世界の件が頭をよぎった。魔王軍幹部であるウィズと戦った時に、終夜はまたも我を忘れて暴走し、あわや緋翼に手をかける寸前まで至ったのだ。
月の比喩は嫌だが、恥ずべき失態という点には変わりはない。
「ま、今日はすこぶる冷静なんで、先輩なんてワンパンですよ」
しかし、今の終夜はとても落ち着いていた。まだ夜が更けていないということもあるが、何より月と戦えることが楽しみで仕方ないのだ。暴走なんかしてたまるものか。
「お、言うようになったじゃん。じゃあ早速デカいの行っちゃうよ!」
終夜の啖呵に不敵な笑みを浮かべると、月は指先に光を集め、空中に何かを描き始めた。なぞった軌跡が青白く輝いているが、何を描いているのか傍目には全くわからない。
「おいで! "モーさん"!」
ところが、何かを描き終わった月が誰かの名前を呼ぶとその光が弾け、徐々に形を成していく。それは角が生えた四足歩行の動物であり、誰もが名称を知っていることだろう。特徴を上げるならば、鳴き声が──
『モォォォォォ!!!!!』
『おーっと、牛です! フィールドに牛が現れました!』
突如としてフィールドに出現した、青白い光で造形された牛。その体躯は通常の個体よりも大きく、人の身長よりも一回りは体高が高い。
まるで雄叫びのような鳴き声とその余りの迫力に、晴登は驚かざるを得なかった。
「召喚魔術……!?」
「惜しい。あれは星野先輩お得意の"擬似召喚魔術"よ」
「擬似、召喚魔術……?」
「普通の召喚魔術と違って、あれは全部星野先輩が一から創り出してるのよ。でもまるで生きているかのように動くから、もはや召喚魔術みたいなものよね」
「凄っ!?」
緋翼の説明を受けて驚愕する。
晴登が知る"召喚魔術"とは、『使役している召喚獣を別の場所から呼び寄せる』というもの。しかし、月が行なったのは"召喚"と似て非なる"擬似召喚"。つまり、ほぼ"創作"に等しい。
"召喚"よりも"創作"の方が魔力消費が大きくて難易度も高いはずなのに、彼女はそれを成し得たというのだ。"生命を創った"とも呼べる御業に、驚かない方がおかしい。
「ちなみに"モーさん"ってのは……?」
「あー……それは技名聞いてわかる通り、星野先輩ってネーミングセンスがちょ
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