壱
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ルヤ。天子ノ宸斷ヲ違犯ス、將安ゾ國朝ニ忠ニスルヤ。汝豈ニ以爲ラク我逃スル能ハザルヤ。如今萬事休セメ、爾我?ニ休セメ、壱切陰陽ト神靈トスラ將ニ斷?センニ至ル、況ヤ天文博士ヲヤ。遮莫四海ニ逃セン、何ノ補益スルカ。然リト雖モ、鎖閉無クシテ我逃セザル者、僕ノ丹心ヲ顯昭セシメンナリト。
是ノ時ニ當リ、宮城ノ空裡ニ於テ、雲氣忽焉トシテ起ク。余恐懼トシテ宮古君ヲ抱擁シ、彼曰ク、此ハ皇運ノ氣ナリ。幕府必ズ亡ボスべシ。然レドモ此所謂「回光返照」ノ者ナリト。
余之ヲ笑フ、君ハ博大ナル壯語ヲ高唱シタリ、豈ニ千秋ノ史上ニ光芒留ムルヲ欲スルニ非ザルヤ。何ヲ以テカ帝室ヲ輔導シ、國光ヲ恢弘スル能ハザルヤ。方今蠻夷ノ軍艦銃砲モ次第ニシテ來リタリ、君何等ノ鴻猷有ルヤ、以テ賊冦ヲ席捲シ、國體ヲ恢復センカ。且君自ラ陰陽ノ大家ト稱ス、我ヲ知リ何ノ妖怪タルヤ。彼?然タリ。
衆生未ダ性命ヲ寳セザル者有ラズ。君見ズヤ、古來ノ隠士モ山林ニ於テ世ヲ避ク。吾一?有リ、武陵ノ桃源モ啻ナラズ、君往ク可キナリ、否ンバ則チ余ガ心豈ニ傷マザルヤ。
衛門府ノ衛士俄ニ到來シ、牢檻ノ人有ルヲ察シタルガ如キ。余驚起シ、出デテ衛士等ヲ戮シ、悉ク斯ニ死シケリ。乃チ宮本君ト共ニシテ遁逃セリ。
余輩東ノ國ニ向キテ行ク、朝暮ヲ辨セズ、常ニ聚落ヲ以テ宿所ト爲ス。意ハザリキハ一日彼ハ醇酎ヲ以テ我ニ飲マセキ、余既ニ沈酔ニ乃チ不可?ノ事ヲ行ヒントハ。余曾チ個中ノ荒唐ナルヲ覺ユル能ハズ、剩ヘ羅網ニ從ヒ、蓋シ余夙ニ此等ノ心願有リラクノミ、特ニ當時ノミニ非ザルナリ、乃チ一己ノ宿願ヲ濫行シケリ。余ノ覺醒スルニ及ビ、彼唯我ガ近傍ニ去ラズ、曰ク願クハ死ヲ以テ罪ヲ謝スト、余又豈ニ奈何トモ為ス可キヤ。歸?スル時ニ及ビ、已ニ自ラ身有リタリ。
歸來セリテ余乃チ宮古君ニ謂フ、吾ガ姉妹所謂覺ナリ。然レドモ人心ヲ察ス可キ者吾ガ姉ノミ。汝豈ニ之ヲ見ルヲ願フヤ。曰ク、我奸惡ノ心無ク、唯彼ノ心ノ善惡ニ係ル。長姉ト談ズ、長姉大ニ驚ク、曰ク是ノ人焉ゾ在ルヤ、安ヲカ之ヲ磔シテ地獄ニ投ゼザルヤト。余徐々ニ曰ク、若シ我在レバ、決シテ是クノ如キヲ得ズ。我豈ニ婚姻ス可カラザルヤ。長姉太息シテ曰ク、汝ハ是ノ人ト偕クシテ來ヅ可シ、我自ラ之ヲ觀ント。
爾後宮古君出デタリ、長姉我ニ謂ヒ曰ク、是レ?常ナル人一個ニ過タズ、迂闊ノ意思多ク、汝何ヲ以テカ偏執シテ是ノ如キヤト。余曰ク擧國ハ華鳥風月ヲ知ラズ、彼獄裡ノ人曾チ之ヲ知ル、我其ノ美ナル心ヲ愛ス。對シテ曰ク、夫レ心豈ニ須臾ノ光彩ニ寄ス可キヤ。
是眞ニ鏡?ノ花ノ如キ。此ノ間覆轍無キニ非ザルナリ。汝一旦心懌バネバ、我ト奈何ゾト。余言フ、、我必ズ堕胎セズ。赤子父無ク、奈何ゾ。長姉黙然タリ。
吾等乃喜悦トシテ、共ニ婚姻ヲ結ビタリ、?里ニ於テ居ル。若シ夫レ女童ハ、覺妖怪ナリ。其ノ女童ハ、幸ニ完
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2024 肥前のポチ