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冥王来訪
第二部 1978年
ミンスクへ
原拠 その2
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焼き払って、一か月ばかり、支那に居た……」

彩峰と篁が勢いよく立ち上がる
「ひと月でハイヴ攻略を成し遂げただと!」
彼は薄ら笑いを浮かべて、男たちを見る
「ひと月ではない、一日だ。
正確に言えば12時間ほどで、最深部ごと吹き飛ばしたのさ」
彼等は顔を見合わせる
目前の青年が語る事が、夢のような話に思えたのだ
未だハイヴの中は人跡未踏の地
湧き出て来る無数の亡者が、あの新彊(しんきょう)の地を赤く染めたのは記憶に新しい
どれ程の惨劇(さんげき)であったのであろうか……
中共政権の徹底した情報統制の結果、彼等には知る由もなかった

「その後は大使館員を名乗る連中に北京で会って、日本に来た。
それだけの事だ」
彩峰は、座るなり、懐中よりタバコの箱を出す
封を開け、茶色いフィルターが顔を覘かせる
3本取り出すと、机に並べ、横にある使い捨てライターを握る
咥えながら、火を点け、吹かす
気分を落ち着かせようとして、深く吸い込む
目を瞑り、ゆっくり紫煙を吐き出すと彼に尋ねた
「貴様の真の目的はなんだ。
冥府の住人であるならば、なぜ日本を選んだ。
なぜ、この世界に留まり続ける……」

乾いた笑いが室内に木霊する
一頻り、笑った後、マサキは彩峰の疑問に答えた
「俺がこの世界を選んできた訳ではない。
気が付いたら居たのだ。
差し詰め、『ハンク・モーガン』の如く、異界に居たのだ。
しかも過去の世界と来たものだ……。
笑わずには居られまい」
眼光鋭く、彼等を見る
「俺が圧倒的な力を持ってして、この世界の百鬼夜行(ひゃっきやこう)に参加するのは、訳がある。
何れ、BETA共が居なくなった後、対人戦が起きる。
規模の大小は問わん。
その際、圧倒的な戦力差で、人類を屈服させ、世界を征服する。
それが俺の望みの一つよ。
陳腐(ちんぷ)な表現かもしれぬがな!」

「俺は、前の世界で、秘密結社・鐵甲龍(てっこうりゅう)に在って人類を抹殺する『冥王計画』を立てた。
だが、些か急ぎ過ぎたのと、俺の人格を乗っ取った秋津マサトの妨害で失敗した。
故に、この世界で、再び慎重さを持って、各国の政財界や軍などの動向を探り、機を見て行動すると決めた。
まずその足掛かりとしてBETA狩りを進んで行う。
そうすれば、俺の名は売れ、無闇に手を出す阿呆共は少なくなるであろう事。
この様に計算して、俺はお前達の策謀に載った迄よ。
マサトも、鐵甲龍の愚か者共も居ぬ。
今こそ、その野望も夢ではない様に思えてきたのだ」
再び彼は笑う
不気味な声で、笑う様は狂人を思わせる様であった

篁は、座りながら、彼の面を見る
笑顔ではあるが、目は据わっている
笑い終えた瞬間、もの悲しそうな瞳で、淵に沈んだような蒼褪(あおざ)めた
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