第三十九話 素敵な偉人その八
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「だって海軍見たらわかるから」
「実際に麦飯を食べてですね」
「脚気になっていないから」
「それで、ですね」
「わかるからね」
「脚気菌もないって」
「だからもう山縣さんもね」
彼もというのだ。
「森さんが何を言ってもね」
「麦飯を送らせたんですね」
「だって脚気って怖いから」
この病はというのだ。
「脚がむくんで身体がだるくなって」
「死ぬんですよね」
「心臓も止まってね」
そうなってというのだ。
「死ぬからね」
「だからですね」
「脚がむくむだけで動けなくなるよ」
「それだと戦えないですね」
「日清戦争でも随分苦しんだからね」
この時も脚気の犠牲者が多かった、日本全体でも結核や梅毒と並ぶ国民病であり国全体で非常に苦しんでいたのだ。
「そんな病気が治るなら」
「もうそれに越したことはないですね」
「脚気菌を探すよりも」
「麦飯だってですね」
「陸軍のトップも考えて」
山縣だけでなく彼の右腕だった桂太郎もそう考えていたし寺内正毅もまたそう考えていたのである。
「それでだよ」
「森鴎外さんを見捨てたんですか」
「というかあんまり頑迷でね」
自分の主張にこだわってだ。
「これは駄目だってね」
「それだと切り捨てたんですね」
「それでも立ててはいったけれどね」
「それでもですか」
「医師としては駄目だってね」
その様にというのだ。
「見極めたみたいだよ」
「脚気のことで」
「そうだったみたいだよ」
「森鴎外にそんなお話があったんですね」
「本名は森林太郎といったけれどね」
生前はこちらの名前でも有名だった。
「確かに抜群に勉強は出来て医師の論文も立派だったよ」
「そのことは事実ですね」
「ドイツに留学してそこでも名を挙げたし」
「学者としては凄かったんですか?」
「多分机上のね」
そのうえでのというのだ。
「それで作家、翻訳家としてもね」
「凄かったんですか」
「それは事実だけれど」
「実際のお医者さんとしてはですね」
「そんな人だったよ、何か文学女子と言われる人の中で」
部長は咲に顔を曇らせて話した。
「凄く勉強出来て留学先でも名を挙げて小説も翻訳も凄くて若くして出世してチートよとか言ってキャーーキャーー言ってる人みたいだけれど」
「脚気のお話を聞くと」
「何この人ってなるよ」
「私もなりました」
咲もこう答えた。
「実際に」
「そうだよね」
「じゃあそのキャーーキャーー言ってる人は」
「この人のことを実は知らないでね」
そうしてというのだ。
「騒いでるだけだよ」
「何か滑稽ですね」
「それで目をハートマークにさせていたら」
部長は顔を曇らせて話した、
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