大荒魂
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「今言っただろう。ヤマタノオロチの存在に刺激されたようだと。だから私は、ちょっとね」
トレギアがクスクスと笑む。
「蓋を少しだけ揺らしたんだよ。その結果が……」
「これだと?」
その言葉の先を引き取ったのは、ブライだった。
「自分では戦わず、全て敵の力に頼るのか?」
ブライは静かにトレギアを睨む。
「おや? どうしたんだいムー人君? 彼女もまた、君の敵だろう? 敵同士で同士討ちをさせているんだ。高みの見物でもしていればいいじゃないか」
「ふざけるな。オレは、絆や仲間といったものを全て否定する。だからそのためには、その絆を持つもの全てを、自らの手で倒す。それでこそ価値がある」
「暑苦しいねえ。君はもう少しクールな奴だと思っていたよ」
ブライはトレギアの言葉を無視し、静かにヤマタノオロチに視線を動かす。
彼にとっては宿敵であるヤマタノオロチも、今のブライのマスクの下には、哀れみさえもあるように思えた。
「ヤマタノオロチも、キサマは利用した後、どうするつもりだ? 喰らって力にするつもりか? まるで寄生虫だな」
「寄生虫か……まあ、いいんじゃないか?」
トレギアは肩を震わせた。
「私はもとより、正々堂々と戦うなんて性に合わない。ヤマタノオロチも、私の体に入れてもいいんじゃないかと思うよ。まあ、別に目的もないけどねえ」
「……」
「そうすれば、私は寄生虫ながら、この星一つを滅ぼしたことになるわけだ。これまでもいくつの星々を滅ぼしてきたが……寄生虫の所業となれば、それはすごいじゃないか」
「開き直ったか」
ブライは身構えた。隣のラプラスもまた、直接トレギアへその刃を向く。
「オレの体に流れる血が許さないんだよ……お前のような寄生虫を野放しにすることをな!」
「ねえ、もういい?」
痺れを切らした美炎が、ゆっくりと歩いてくる。彼女が一歩一歩歩み続けるごとに、その足元に炎の足跡が残る。
「そろそろ斬らせてよ。誰でもいいよ? 可奈美? ハルトさん? ソロ? それとも、トレギア?」
「嘘でしょ……」
ウィザードは、力なくウィザーソードガンを構える。結果的にブライたちと背中合わせになるが、彼はウィザードの存在など気にすることはない。
暴走した美炎。そして、地上に出すことが許されないヤマタノオロチ。トレギアの存在もある。
二体の大荒魂と最悪の参加者に対して、疲弊した魔法使い一人と負傷した刀使一人、そして協力は見込めないムーの戦士一人。
「どうしろっての……?」
その状況に、ウィザードはサファイアのマスクの下で笑うことしかできなかった。
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