外伝 夕張編 01 平賀の妄執
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戻ってきた。艦時代を遙かに凌駕する規格外の兵装実験軽巡として、第一次深海棲艦戦争の中盤以降を馬車馬のように戦場を駆け巡った
そして・・・
第U世代になってからの夕張は、明石の元で武装の改修や新兵装の実験や実戦テストを手掛けながら、データ収集に勤しんでいた。明石にとっても、兵装実験軽巡である夕張の多彩な武装搭載能力は魅力的であった。互いの利害が一致した、極めて打算的なタッグであったことは否めない
この頃になると、深海棲艦の脅威も一応の落ち着きを見せ始めていたため、かつてに比べ、時間的な余裕が取れるようになっていた
改・八六艦隊整備計画が一段落した後、夕張は予てから予定していた、ある《実験》に着手する。そして、当時の夕張にとって一番の興味の対象は《艦娘》そのものであった
予てから夕張には、艦娘の解剖や艤装の破壊を通して、《艦娘》という存在の深淵を覗いてみたいという願望があった。彼女にとって、艦娘は艦艇の上位互換くらいの認識でしかなく、人としては見ていなかった
そんな考え方が災いしたのか、夕張は少しずつダークサイドへ足を踏み入れつつあった
だが、そんな彼女でも、流石に仲間を解剖するのは幾分抵抗があったようで、色々と逡巡した結果、あろう事か夕張は《自分自身》を解剖する考えに行き着いた
しかしこれにはひとつ問題があった
解剖の途中で自身が絶命してしまっては、肝心のデータが取れない。これではせっかく死んだ意味がなくなってしまう。無論このような所業に手を貸す者などいるはずもなく、夕張の計画は暗礁に乗り上げた
そこで夕張は、艦娘の修理・手当用のドックを改造してNC化し、解剖手順をコンピューターに入力し、自らを解剖させた。途中経過は映像を含め、全てデータ化して自室のサーバーに転送・保存した。これなら、例え夕張が途中で絶命しても、データは残る。続きは第V世代に託せばいい・・・そう考えていた
結果から言うと、夕張は死ぬ事はなかった。細切れに解体された夕張の艤体の残骸を明石が発見し、船渠で当時夕張と共同開発中だった高速修復材の試作品を大量投与して再生したのである
当然ながら、夕張は提督と明石にこってり絞られた。だが、二人のお小言を聞かされている時でさえ、夕張は別の事を考えていた
《・・・何故、私は死ななかったんだろう?》
あれだけ見事に、それはもう体中の結合部単位で破壊したのである。普通に考えて、生きていられるはずがなかった
《まさかあの状態でも高速修復材が効くとはね・・・流石に想定外だったわ・・・・私・・・何かを見落としてる?・・・》
そんな夕張
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