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それが一番喜んで貰えるので
第二章

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「この日は男の子は女の人からチョコレートを貰う日なんだぞ」
「そんな日なの」
「プレゼントで。だから今僕はプレゼントを食べているけれど」
「私はおやつなの」
「そうだぞ。今日は違うんだぞ」
 こんなことを言いながらだった。
 雄大は妹に誇らしげに言いつつチョコレートを食べていった、そして家から帰った夫の天馬息子達が四十近くになってそろそろ腹が出て来た感じの彼がだった。
 家に帰って夕食の後でだ。
 妻が出したそのチョコレートを貰って有り難うと言ってから食べて言った。
「今年も作ってくれたんだ」
「チョコレートをね」
「そうなの」
「そう、そのまま出すよりもね」
 買ったものをというのだ。
「その方が風情があってあなたも喜んでくれるから」
「別に買ったものでもいいのに」
「笑顔は嘘を吐かないわよ」
 にこにことしながら食べる夫の向かい側に座って話した。
「あなたに買っただけのチョコを出したらにこってしただけだったわ」
「そうだったんだ」
「けれど作ったチョコを出したら」
 その時はというのだ。
「にこにことしていたから」
「にこが一つ多いね」
「そう、あなたは意識していなくても」
「出ているんだ」
「結婚前にそれがわかったからね」
「ああ、最初は買ってくれたものだったね」
「その時はにこっ、だったのよ」
 チョコレートを貰った時の笑顔はというのだ。
「それが翌年、結婚する前の年だったわね」
「その時に作ってくれたものだったね」
「そうしたらにこにこだったからよ」 
 そうした笑顔だったからだというのだ。
「私はその時のあなたを見て決めたの」
「バレンタインの時のチョコレートは作ったものを出すって」
「そうなの、その笑顔が見たいから」
 だからだというのだ。
「そうしたのよ」
「そうだったんだね」
「そうよ、じゃあ来年もね」
「作ってくれるだね」
「その笑顔が見たいからね」
 夫に笑顔で話した、見れはその時の梨衣の顔もにこにことしていた、彼女の笑顔もそうしたものになっていた。


それが一番喜んで貰えるので   完


                      2022・2・2
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