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それが一番喜んで貰えるので
第一章

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               それが一番喜んで貰えるので
 結婚して十年目、もう大きな子供が三人いる長名梨衣はこの時キッチンに立っていた、それで長男で小学二年生の雄大学年で一番背が高い癖のある黒髪の彼に言われた。
「お母さん何してるの?」
「バレンタインのチョコ作ってるの」
 梨衣はレシピを見て調理をしつつ長男に答えた。
「もうすぐだからね」
「それって僕の?」
「あんたのとね」
 梨衣はさらに言った、丸く大きな目と小さな薄いピンクの唇で細く黒い眉とやや丸い顔で収まりの悪いあちこちはねた茶色の髪の毛を短くしている、背は一五四程で胸はないがジーンズがよく似合うスタイルの持ち主である。
「お父さんのよ」
「相のは?」
 雄大は弟の名前を出して尋ねた。
「ないの?」
「あの子はまだ赤ちゃんだからね」
「赤ちゃんはチョコレート駄目なんだ」
「歯が生え揃ってないでしょ」 
 まだそうした状態だからだというのだ。
「無理よ、あと静葉もね」
 長女で幼稚園高学年の娘のことも話した。
「あの娘は女の子だから」
「あげないの?チョコ」
「あげてもおやつよ」
 それであげるというのだ。
「バレンタインでプレゼントでチョコレートあげるのは男の子になの」
「そうなんだ」
「だからあんたにあげてね」 
 チョコレートを溶かしながら話した。
「お父さんにもよ」
「あげるんだ」
「そうするわ、だから楽しみにしていね」
「それじゃあね」 
 雄大は母の言葉に頷いた、そうしてだった。
 チョコレートが貰える日、やっとその日をバレンタインと言って二月十四日であることを覚えたその日を待つことにした、そして学校から帰るとパートから帰ってきた母におやつの時間に妹と一緒にだった。
 色々な果物やお菓子をチョコレートで包んだそれを出してもらって食べた、この時に彼は母親そっくりの妹に誇らしげに言った。
「いいだろ、僕はプレゼントなんだぞ」
「おやつじゃないの?」
「お前はおやつだけれどな」
 それでもというのだ。
「僕はお母さんから貰ったプレゼントなんだ」
「そうなの」
「今日はバレンタインだからなんだ」 
 その覚えたての日の名前を出して話した。
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