第二部 1978年
ミンスクへ
ベルリン その6
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きで、オイルライターの蓋を親指で開け、着火
縦型の細いライターをゆっくりとタバコに近づけ、火を点ける
静かに吸い込むと、目を瞑り紫煙を、吐き出す
「奴等がどんな手を使ったが知らないが……。
尻を捲って、俺達にご高説を垂れる様な事を始めた。
手前の国一つ満足に管理出来ねえ癖して、あれやこれや指図する様には俺も腹が立った。
だから、お前さんも引き込んで、《おやじ》を追い出した。
その茶坊主も俺は近々手入れする積りだよ」
彼は目の前の男に恐る恐る尋ねた
「私に、その様な事を話して大丈夫なのかね」
男は、左手の食指と中指にタバコを挟み、彼の方を暫し見る
不敵な笑みを浮かべる
「お前さんは、娘と息子という人質が居るから、自分の手駒だと連中は考えている。
御目出度い連中だよ」
深々とタバコを吸いこむと、灰皿に立てて消した
「党の代紋背負っている以上、手前の子飼いの部下すら守れねえ様じゃ情けねえ。
巫山戯た真似をするようなら連中には消えて貰うまでよ……」
新しいタバコに火を点けながら、男は彼に向かって言った
「話は変わるけどよ。
お前の娘御、今度の11月23日で19になるだろ」
彼は、組んでいた両手を解く
眼前の男は、娘の誕生日を正確に答えたのだ……
詰り、全て内情を知っていると暗に彼に答えている
これは遠回しな脅しとも取れる
「どうだ、この際あの小僧に本当の家族になって貰うのはどうだ。
牧師でも呼んで、盛大な祝言でも挙げさせるか。
作戦がどうなるか、解らねえが、何時までも責任を取らねえのは、なあ」
彼は、再び右手を頬に当て、考え込む
「その、ミンスクを落とせば一段落着くと……」
男は左手に持った煙草を下に向け、灰皿の上に置く
再び手で摘まみ、口元に近づけると、二口程吸う
そして、天を仰ぎながら、呟いた
「甘い見立てかもしれねえが、化け物退治は、一段落は付く。
結末がどうであれ、どっちにしろ米ソの陣取合戦が再開するのは目に見えてる。
後片付けの方が恐ろしい。
今は形振り構わず金をばら撒いているが、それが終わった時、現状のままだったら何が残る。
不味い飯を喰って、襤褸車を乗り回し、素っ気もねえ売り子が居る商店に行って、小汚ねえ住宅に押し込まれて暮らす。
ボンの連中が流すTV映像を見てる市民が納得するか。
満足出来ねえのは、小僧でも解る」
男は灰皿にタバコを押し付ける
「東西の協力というお題目を形ばかりの物ではなく実現させて見せる。
仮に党が吹っ飛んでも、その実績があれば、俺やお前さんの事を、ボンの
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