第二部 1978年
ミンスクへ
ベルリン その6
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アーベルの口から嘆息が漏れる
「私も、君が言う様に国家保安省の連隊強化と謂う形で第四軍を手に入れても、ドイツ経済にとっては何の利益も無い。
それをこの様な形で実感するとは、情けない事になった物だ」
議長代行は、その言葉を肯定する
タバコに火を点けながら、呟いた
「な、解っただろう。
俺も、あの馬鹿共には手を焼いてたんだ。
連中に近いお前さんが諦めてくれれば、大勢は動く」
ガラス製の灰皿を、彼の前に差し出す
懐より赤白の特徴的なパッケージのタバコを取る
黒文字でマールボロ(Marlboro)の文字が見える
資本主義の代名詞の様な商品
コカ・コーラやマクドナルド等と同様に商業広告で世界中に販路を広げた
《カウ・ボーイのタバコ》などと喧伝して西側では売られていたのを彼は思い起こす
「君は、是を何処で……」
男は悪戯っぽく笑う
「何、食料購入の際、連中が茶菓子と共に俺に置いてたのさ。
段ボール10箱程在るから、その辺にばら撒けってことだろう」
段ボール10箱……
それを聞いて唖然とした
一箱1万本だと計算すれば、標準的な20本入りで50カートン
マールボロは、ソ連国内では通貨代わりに闇で流通している人気商品
モスクワ辺りで交通警官に捕まった際は、このタバコ一箱で軽い訓告やお目こぼしで済む《商材》
それを、挨拶代わりに持ち込む米国の厭らしさと物流の凄さ
彼は改めて、その国力差に打ちのめされるのであった
「お前さんは、保安省の馬鹿共が経済界を牛耳ってこの国を回そうなんて絵空事を倅に話したそうじゃないか。
だいぶ感化されていて、真剣になって俺に聞いてきたんだ。
この間、来た時、シュトラハヴィッツの小僧と一緒に言ってやったんだよ。
手前等の父親を蔑ろにするなとな」
アーベルは右手を頬に当てる
「シュトラハヴィッツに妙齢の息子がいるとは初耳だ。
奴には10歳にならない娘だけだと思ったが……」
男は破顔し、部屋中に笑い声が反響する
「お前さんと同じだよ。
奴も、《青田買い》して、先々に備えてるんだ」
彼も追従した
「あの男がそんな事を……。
随分と速い婿探しなどをして……」
男は、彼の姿を見てさらに笑った
「なあ、可笑しかろう。
若い娘を持つ父兄の所に出向いては、娘の顔写真を見せるあの親莫迦が……
傑作だよ」
一頻り笑った後、男は語りだした
「このBETA戦争は、体制強化や統制で乗り切れるものではない。
如何に西側から金を無心するか、どうかだ。
ソ連の連中はそういう意味で手際が良い。
もうアラスカくんだりに遷都する心算で居る」
箱より、茶色いフィルターのタバコを取り出す
慣れた手つ
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