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冥王来訪
第二部 1978年
ミンスクへ
ベルリン その4
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述べている
一番階級の高い少佐の階級章を付けた優男は、罵詈雑言(ばりぞうごん)を物ともせず、両腕を腰に当てて立っている
背筋を伸ばし、周囲を窺っている
「気色の悪い男」
彼の率直な感想であった
その男が不意に彼の方を向くと、声を上げてきた
「君かね。同志ベルンハルト中尉」
「何の用があってこの基地まで来たんだ。
法執行なら、憲兵隊を呼べば十分だろう。
民間施設じゃないんだから、引き取ってくれ」
男は彼に向かって、敬礼をする
「君も妹さんと同じで釣れないね、同志中尉。
改めまして、私は保安省第一総局のアスクマン少佐だ。
今後ともお見知りおきを」
そして白い革手袋をした右手を伸ばし、握手を求めてきた

 彼は困惑した
あの母を堕落させ、父を狂わせた国家保安省
目の前にその憎むべき存在が、居るのだ
あの禍々しい制服を着て、自らに握手を求めて来る
彼は、拒絶という返答をもって男に示した
「少佐《殿》が、なぜ、基地に来られたのか、理解に苦しむね」
右手で勢い良く指揮棒を振り、左の掌に当てる
音を立てて、叩き付ける様は、男の不満を表していた
「残念ながら、我が人民共和国には「領主」も居なくば、「奥方」も居らぬのだよ。
《同志》ベルンハルト中尉。
君の、この封建主義的な特権階級を黙認する発言は、無論《閻魔帳》に記させて頂くよ。
それが保安省職員たる、私の《任務》だからね」
アスクマン少佐は、声を立てて笑った
 
 不敵な笑みを見て、彼の心の中に憎悪が渦巻いた
あの団欒を奪った憎むべき組織
今、恋人と妹を毒牙に掛けんとしている
彼は、政治的に危ない橋を敢て渡る選択をした
もう引き返せないであろう……
軍の上司、同僚、部下、その家族……
妹や両親、育ての親。恋人、岳父と義母。
数少ない友人達の為にも、その様な道を選んだのだ
「俺からも言わせて貰おう。
あんたの、今の行為は越権行為だ。
それを認められているのは政治総本部から出向される政治将校だ。
文民警察官たる保安省職員にその責務は無い」
曹長が割り込んでくる
「さあ、同志アスクマン少佐、お引き取り願いますかな。
此処には血気盛んな若人(わこうど)が多数いますので、不測の事態が起きれば、貴官の責任問題に発展するのではないでしょうか。
何なら、憲兵立会いの下で、お話は伺いますが……」
曹長が話している最中に、後ろから声が飛ぶ
「話が有るなら、軍団長(おやじ)が居る時に来い。
そこに居る中隊長(ちゅうすけ)には、(なあん)も出来んぞ。
さあ、(けえ)った、(けえ)った」
兵の一人が、少佐に言葉を投げかけたのだ
脇に居る曹長は、目を白黒させている
遅れてきたヤウクは、不敵な笑みを浮かべている
ヤウクの存在に気付いた彼は、訪
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