第六十八話 入学式その九
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その子が詰所の事務所の中にいる私を見てすぐに事務所の前まで来て言ってきました。
「滅茶苦茶似合ってますよ」
「そうかしら」
「スマホに撮っていいですか?」
こんなことも言ってきました。
「一生保存しますから」
「いや、一生って」
「これは保存しないと駄目ですよ」
「よかったらツーショットどうかな」
事務所にいた杉浦さんが新一君に笑って言ってきました。
「そうしたら」
「それはちょっと」
「恥ずかしいかな」
「先輩が迷惑なんじゃ」
「別にいいけど」
私はこう答えました。
「一緒に撮っても」
「いいんですか?」
「何でもないでしょ」
同じ高校と大教会の先輩後輩ですし。
「だからね」
「よかった、本当に今日は絶対にって思ってたんですよ」
新一君は私の返事に飛び上がらんばかりに驚いて言ってきました。
「若し断わられたっても思っていて」
「断わるって?」
「はい、先輩の振袖袴姿をって思いまして」
「断わる理由ないでしょ」
「いえ、それでもですよ」
「私に断られたらって思ってなの」
「不安に思いながらここまで来たんです」
そうだったというのです。
「ですがいいって言ってもらってです」
「よかったのね」
「じゃあまずは一人のお姿と」
それにというのです。
「僕とのツーショットも」
「撮るのね」
「それで一生保存しますから」
「一生って極端でしょ」
「いや、阿波野君の気持ちわかるよ」
杉浦さんはにこにことして言いました。
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