第二章
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「あの旦那は片目だから化けやすいしな」
「そうするか」
「それはまた大胆なことをやるな」
「しかし面白いな」
「やってみろ」
「それで酒を頂戴してみろ」
「そうするな」
仲間達に言ってだった。
権吉は左吉に化けた、片目であるところもちゃんとした。そうして村に行って彼の家に入って言った。その時はもう夜だった。
「帰ったぜ」
「あれっ、あんた」
お福は家に帰った亭主を見てだった。
すぐに眉を顰めさせた、だがそれをすぐに隠して聞き返した。
「帰るのは明日じゃないかい?」
「変わったんだ」
薪を出しつつこう返した。
「急にな」
「そうなのかい」
「他の奴は明日帰って来る、わしは今日帰ってまた山に入る」
「そうするんだね」
「ああ、だからな」
「今日は家で休むんだね」
「そうする、酒だ」
彼は目当てのそれの話をした。
「出してくれ」
「酒だね」
「そうだ、あるんだよな」
「あるよ」
女房は亭主を見つつ応えた。
「それじゃあだね」
「ああ、出してくれ」
「そうさせてもらうね」
お福はすぐに酒を出した、そしてだった。
権吉、左吉に化けた彼は目当ての酒をたらふく飲んだ。左吉にとっては少しだったが権吉にとってはそれだけの量で。
彼はすぐに酔い潰れてしまった、それから。
目覚めるとだ、彼は動けなくなっていた。気付くとだった。
家の柱のところに座らせられていてそのうえで両手を後ろにやって括りつけられていた、それで彼は驚いて言った。
「これはどういうことだ」
「どういうこともじゃねえ」
すぐにだった、男の声がした。声の方を見ると。
左吉がいた、彼は酒を飲みつつ権吉に言った。
「わしに化けるとはいい度胸だ」
「あんたは樵の旦那か」
「そうだ、帰ったらお前さんがそうしてだ」
「あたしが括り付けたんだよ」
左吉の横にいるお福も言ってきた。
「どうせ旦那の話を山で聞いて酒を飲もうって来たんだろ」
「よくわかるな」
「やっぱりそうなんだね」
「わしは狸だ」
権吉は自分からこのことを言った。
「権吉と言う」
「狐か狸かと思ったがな」
「狸だ」
こう左吉に答えた。
「半分当たったな」
「そうだな、しかし何でわしが化けているとわかった」
左吉は二人にこのことを問うた。
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