第三章
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「お主達今はどう思っておる」
「そのまま述べて宜しいでしょうか」
「そうしても」
「構わぬ」
家康は二人に答えた。
「申してみよ」
「そうですか」
「そう言われるなら」
「うむ、何でもな」
自身の本陣に座してそのうえで二人に言った、すると。
まずは長屋がだ、こう言った。胸を張って堂々と答えた。
「この戦において一番槍を出来てです」
「満足か」
「左様であります」
「わかった、ではお主はどうじゃ」
今度は青木に問うた。
「何を言いたい」
「今日の戦で一番首を取ることが出来ました」
こう家康に答えた。
「それで満足です」
「左様か」
「はい」
目を大きくして怒鳴る様に答えた。
「これで」
「そうか、二人共か」
「ではどうぞ」
「お好きな様に」
「首を取られるならそうされよ」
「ここまできてあがきませぬ」
ここで二人は名乗りもした、そこまで聞いてだった。
家康は二人の堂々とした言葉と態度に感銘を受けた、それに」
井伊家の赤備えの中にそれぞれ黒と白で紛れ込んだ二人のことも聞いていたのでこうも言った。
「赤の中に黒と白で入ったのも面白い、それも縁であろう」
「それでは」
「この二人の態度も見事であった」
傍に控えている直政に答えた。
「だからな」
「それで、ですか」
「この者達の縄を解いてやれ」
二人を見つつ命じた。
「見事な武士じゃ、召し抱えるべきじゃ」
「そうされますか」
「うむ、二人共五百石を与える。そのうえで迎えたいが」
直政に言ってだった。
二人に対してもだ、顔を向けて問うた。
「お主達はそれでよいか、嫌なら禄はないし望むなら腹を切ってもよいが。主家に忠義を尽くしたいのならな」
「長門守様はもう討ち死にされたとか」
「立派なお最期だったとか」
「ならばもう主を持たぬ身」
「そう言って頂けるなら」
「うむ、ではな」
家康は微笑んで頷いた、こうしてだった。
彼は二人を赦したうえでそれぞれ五百石で召し抱えた。こうして赤備えの中にそれぞれ黒と白の母衣を着けて迷い込んだ二人は幕府の臣となった。
徳川家康は豊臣家について様々な謀を企みまた酷薄だったと言われる、だがその彼がこうして二人の立派な者達を赦したうえで召し抱えその他にも多くの立派な者達を救ったことも知られている。そのことを見ると決して酷薄だった訳ではないことがわかる。むしろこうした者を進んで助けた。天下を治め以後の長き泰平をもたらした者の片鱗が見せたと言うべきであろうか。豊臣秀頼の遺児を処刑したと言っておいて実は見逃して後は見て見ぬふりをしていて幕府自体にもそうさせていたともいう。このことは事実かどうかわからないが家康の度量と慈悲を示す話としてこの話を伝えておく。大坂の陣で
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