第9話 節目と新たな関係
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されたようで人が住んだ形跡はなかった。
私は、その現場である広間に立っている。
大きな窓からは大分傾いた日が差し込み、部屋を紅く染め始めている。
さすがにあの後片付けたのか、広間は綺麗になっており、血の跡などの形跡は残っていない。
ちなみにエヴァはこの場に居ない。
あの後城門をくぐり、城の中を見て回った。
駐屯していた兵のための兵舎や、使用人のための宿舎。物資を納める倉庫や、馬のための厩舎。
朽ち始めたそれら建物の合間を歩きながら城壁に上った時、それは見つかった。
城に接するように広がる森の中に、綺麗に切り取られたように円形の空白地を見つけた。
それを見た瞬間、エヴァは走り出し、私もそれに続いた。
きっとそこには・・・
森の端から続いた獣道は、その空白地に続いていた。
そして到着したそこには、予想通り2つの墓が、静かに佇んでいた。
私はそっと墓の前に跪き、手を合わせる。
(はじめまして、エヴァンジェリンの義姉をやらせて頂いています、シルヴィアです。彼女は私が必ず守ります。どうか心安らかに、お眠りください)
短く祈りを捧げると、私は立ち上がり、エヴァを残して城に戻った。
物思いにふけっていると、広間の扉が開く。
入ってきたエヴァは、落ち着いて見えた。
「もう、いいの?」
「ああ・・・もう大丈夫だ」
その表情、声音のどこにも無理の色は感じられない。
悲しくないはずはない、ただその悲しみに溺れるほど弱くもない、か。
この10年で本当に強くなったのだ、そんな事を考える私。
「それで?そろそろここに来た理由を教えてくれてもいいんじゃないか?」
そんなエヴァの言葉に、今度は緊張し始める私。
もちろん勝算はある。むしろかなり有ると言える。それでも緊張はするものなのよ。
こんな緊張、初めてエヴァと会って、一緒に旅することを誘った時以来かもしれない。
かといって何時までもだんまりを決め込む訳にもいかない。
意を決した私はエヴァの前に立つと、右のポケットから手のひらに収まる箱を取り出し、差しだす
「これをあなたに受け取って欲しいの」
静かにそう告げる私に、エヴァは首をかしげながら受け取り、箱を開く。
困惑が彩っていた表情は、箱を開いた瞬間驚愕に変わる。
箱に入っていたのは、銀に輝く、宝石もついていないシンプルな指輪。
唯一の装飾は、内側に掘られた『S to E』(シルヴィアからエヴァンジェリンへ)の文字のみ。
それが示す意味はただ1つ。しかしそれは、普通の人が示す以上の意味を持つ。
これはただの婚約指輪や、結婚指輪を示すものではない。
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