第三章
[8]前話
雀達は清涼殿にまで入った、そこでだった。
食卓の上の飯に群がりついばみだした、これには誰もが不吉なものを感じた。
「何と、清涼殿の飯をついばむとは」
「これはよからぬこと」
「不吉だ」
「只の雀ではないぞ」
「一体何だ」
「これは何事だ」
「これは陰陽師に調べてもらおう」
こうした話になり宮中にいる陰陽師がすぐに調べた、そして。
陰陽師は帝にこう述べた。
「これは先の陸奥守殿の祟りかと」
「左近中将だった」
「はい、あの方のです」
実方のというのだ。
「祟りです」
「そうであるのか」
「陸奥に送られたことを怨まれて」
その為にというのだ。
「ご自身に責があるとわかっておられても」
「怨みは抱いてか」
「そのうえで亡くなられ」
そうしてというのだ。
「祟りを為されています」
「わかった、では中将の魂を弔い」
帝は陰陽師の話を聞いてすぐにこう言われた。
「そしてな」
「そうしてですね」
「官位も授ける、そうしてな」
「祟りを鎮められますね」
「その様にしよう、殿の飯が奪われるなぞ不吉の極み」
それ故にとだ、帝は言われた。
「その様にしよう」
「さすれば」
陰陽師もそれがいいと頷いた、こうしてだった。
実方の魂は弔われ官位も与えられ祟りは鎮められた、以後宮中にこうしたことが起こることはなくなった。
だが北陸では時折雀が多く出て虫ではなく米を食った、それで都からそちらに来た者がこの話をした。
「そうしたことがありまして」
「ではあの雀達は中将様の祟りですか」
「内に入って祟られた」
「それでしょうか」
「そうやも知れないですな」
こうその地の者に話した、そしてだった。
以後北陸ではこうした雀達を入内雀と呼んだ、虫ではなく穀物を食べる害ある雀は実方の祟りであるとして。それは今も同じである。
入内雀 完
2021・9・13
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