第二章
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他ならぬ西本が走る山田を見た、そして彼はその厳めしい顔で無言で頷いた。
山田は何とか酒を抜き少なくとも見ただけではわからない位になった、それでマウンドに向かうことになったが。
ここでだ、福本は山田に彼のポジションであるセンターに向かう途中で尋ねた。
「ヤマちゃん、大丈夫かいな」
「ああ、何とかな」
山田はその福本に応えた。
「投げられる」
「そこまで酒抜いたか」
「そうしてきた」
こう福本に答えた。
「何とかな」
「そうしてきたか」
「走って汗かいてな」
そうしてというのだ。
「そやからな」
「投げられるんやな」
「ああ、そやからな」
「今日はやな」
「勝つわ」
こう言ってだった。
山田はマウンドに上がった、そうしてだった。
両手を思いきり上に掲げたうえで地面すれすれのところから投げるアンダースローで相手に向かった、彼は投げたが。
しかしだ、流石に朝まで飲んでいただけあり。
本調子でなかった、それでだった。
四点の自責点を出した、しかし試合は壊さずに。
勝利投手となった、だが。
山田は試合が終わってその後のミーティング前に加藤に言った。
「いや、もう今日はな」
「悪かったな」
「勝ててよかった、それで監督には」
「ばれてたらその時点で拳が来るやろ」
「監督やとな」
「そうした人やろ」
ここでも西本のことを話すのだった。
「そやからな」
「そうなってたな」
「ああ、それは安心してええ」
「そやな」
「それで勝った」
「それやとか」
「もう言うことはないやろ」
西本にしてもというのだ、そうした話をしながらだった。
山田はチームメイト達と共に試合後のミーティングに入った、そこで西本は山田を見てから選手達に言った。
「わしは今朝自分の部屋からヤマを見た」
「ヤマですか」
「そうでしたか」
「こいつは朝から宿泊先出て走ってた」
このことを見たというのだ。
「そして今日投げたな、調子はよおなかったが」
「ええ、勝ってくれましたね」
「試合は崩さずに」
「そのうえで」
「そうやからな」
それでというのだ。
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