第一章
[2]次話
通り悪魔
江戸は火事が多い、その為冬になると幕府も神経を尖らせていた、それは奉行所も同じで南町奉行大岡忠助も火事が起こらない様にそして起こった時もどうするかに腐心していた。
だがこの年はとりわけ火事が多く彼も困っていた。
「幾ら何でも多過ぎる」
「左様ですな」
「毎日の様に起こっています」
「常にすぐに消していますが」
「これはおかしいですな」
「どうにも」
「火付けをしている者がおるのか」
大岡はその目を鋭くさせて言った。
「若しや」
「火付けですか」
「そうだとすると許せませんな」
「その者すぐに捕らえてです」
「火付けをなくさねばなりませんな」
「うむ、夜は見回りを増やす」
奉行所としてそうするというのだ。
「そしてな」
「若し火付けをする者がおれば」
「その時はですな」
「容赦なく捕らえ」
「そして火付けをなくしますか」
「それがしも毎夜見回る」
大岡自身もというのだ。
「そうする」
「そうされますか」
「お奉行自ら」
「毎夜出られますか」
「こうしたことは進んで動かねばならん」
これが大岡の考えだった。
「だからな」
「わかりました、ではです」
「我等も毎夜見回ります」
「そしてそのうえで」
「ことを収めましょう」
「その様にしよう」
こう言ってだった。
大岡は自ら毎夜見回り火事を見張った、そうしているうちにだった。
ある夜見回っているその時に火事が起こった、すぐに火消しが駆け付け周りの建物が壊され火がそれ以上広まらない様にされ。
火事自体も収められた、大岡はここでだった。
周りを見回した、すると。
火が燃え移らなかった家の屋根から何かがひらりと飛び降りた、それを見て彼は奉行所の与力や童心達に言った。
「あの家から何かが飛び降りた」
「そうなのですか」
「まさかと思いますが」
「それが火付けですか」
「そうやも知れぬ、だからな」
そう見るからだというのだ。
「すぐにな」
「はい、あちらに行きますか」
「あの家に」
「そうされますか」
「すぐにな」
大岡はすぐにそちらに向かった、奉行所の者達も続いた。
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