第二章
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「うわーーーーーーーっ!」
「この叫び声は」
「まさかと思うけれど」
「狸か?」
「石を投げていたという」
家の者達は主の声を聞いてすぐに思った。
「まさか」
「それで馳走に驚いて」
「そのうえで」
「そうじゃな、見よ」
主が部屋から見える庭を指差すとだった。
大きな狸が跳び上がってそのうえで家の壁を乗り越えてそのうえで逃げ去っていくのが見えた、そしてだった。
家の者達は皆で酒にその馳走を楽しんだ、この宴の後で狸は家にいなくなり石が来ることもなくなった。
その後で主は定家にことの次第を話した、すると定家は彼に楽しそうに笑ってそのうえで話をした。
「そうなったでおじゃるか」
「はい、狸は驚いてです」
「そうしてでおじゃるな」
「逃げ去りました」
家からというのだ。
「そしてです」
「出ることはないでおじゃるな」
「はい」
まさにというのだ。
「そうなりました」
「ほっほっほ、人にぶつけなければ穏便にと思い」
「そうしてですか」
「犬を飼う位でいいと考えたでおじゃるが」
「今それで犬も飼いました」
主はそうもしたと話した。
「もう二度と狸が来ない様に、あと番犬にもなるので」
「そうしたでおじゃるか」
「左様です」
「それはいいことでおじゃる、ただ」
「それでもですか」
「やはり効いたでおじゃるな」
定家は笑って述べた。
「狸料理は」
「はい、狸の肉を買って」
「そして料理をすればでおじゃる」
「狸が驚くのは当然ですか」
「人も鬼が人を食うので恐れるでおじゃる」
今度は鬼の話もした。
「だから鬼は怖いでおじゃるが」
「それは狸から見ても同じですか」
「狸を喰らう人なぞ」
狸から見ればというのだ。
「それこそでおじゃる」
「怖くて、ですか」
「逃げ去るでおじゃる」
「そうなるからですか」
「勧めたでおじゃる、そしてでおじゃる」
定家は面長でやや大きな丸い鼻と小さな芽が目立つ顔を綻ばせて話した。
「これで狸は去ったでおじゃるから」
「石のこともですか」
「なくなったでおじゃるよ」
「そうですか」
「何よりでおじゃるな」
「この度は有り難うございます」
「礼には及ばんでおじゃるよ」
定家は今度は気前のいい感じで笑って話した。
「民の難を除くことが公卿の務めでおじゃるから」
「宜しいですか」
「そうでおじゃる」
「ですか、ですがよくして頂いたので」
「ほっほっほ、ならでおじゃる」
どうしてもというのならとだ、定家はここでだった。
主に家に訪問してよいかと問うた、男が是非にと答えると。
男の家に入ってそこで一首詠んだ、それで詠わせてもらったことを謝礼として受け取った。そして満足して自身の屋敷に帰ったのであった
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