第一章
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狸つぶて
鎌倉の最初の頃の京の都の話である、ある古い家の屋敷で家の者達が困っていた。
「全くどうしたものか」
「これは厄介だ」
「誰がこんなことをするのか」
家に時折何処からどもなく石が投げ込まれることは度々起こっていた、それで家の者達が困っていたのだ。
石は何時何処から投げ込まれるかわからない、それで尚更困っていた。それで家の主が親しく付き合っている公卿であり歌人でもある藤原定家に相談した。
すると定家はその話を聞いてすぐにこう言った。
「それは狸でおじゃるな」
「狸ですか」
「狸つぶてでおじゃる」
それだとだ、定家は主に落ち着いた声で話した。
「狸の悪戯の一つでおじゃる」
「そうなのですか」
「狸は隠れて石を投げることもしてでおじゃる」
「悪戯をするのですか」
「化かしたりでおじゃる」
「ううむ、そんなことをするとは」
「それが狸でおじゃる、悪戯をすることが」
まさにそのことがというのだ。
「生きがいでおじゃるからな」
「そうしたこともしますか」
「そうでおじゃる」
「随分と性質が悪いですな」
「それが狸というものでおじゃる」
定家の言葉はこの時も落ち着いている、激しやすいと言われるがこの時は至ってそうしたものであった。
「そしてどうするかはでおじゃる」
「ご存知でしょうか」
「狸は犬が嫌いでおじゃる」
「そうなのですか」
「だから家に犬を飼えばでおじゃる」
それでというのだ。
「近寄らないでおじゃる、ただ」
「ただ、ですか」
「意地の悪いやり方もあるでおじゃる」
こうもだ、定家は主に話した。
「これはこれで」
「意地の悪いですか」
「その狸は家の者に石をぶつけてくるでおじゃるか」
「それで余計に困っています」
主は困った顔で答えた。
「実は」
「なら容赦することはないでおじゃるな」
定家は考える顔になって答えた。
「もうここはでおじゃる」
「意地の悪いですか」
「容赦なくいくべきでおじゃるな、石は当たりどころによっては死ぬでおじゃる」
そうなるからだというのだ。
「そんな狸ならでおじゃる」
「容赦なくですか」
「やるべきでおじゃる」
こう言うのだった。
「ではこれから麿の言う通りにでおじゃる」
「するといいですか」
「そうでおじゃる、それは」
定家は主に具体的なやり方を話した、そして。
その話を聞いた主はではと頷き家に帰った、彼は家に帰るとすぐに家の者達にこう言ったのだった。
「宴をするぞ」
「宴ですか」
「それをしますか」
「これより」
「家の者皆で楽しむぞ」
その宴をというのだ。
「盛大にな、そして馳走は」
「何でしょうか」
「何にしますか」
「それで
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