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冥王来訪
第二部 1978年
ミンスクへ
ベルリン その3
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しながら、日本側に連絡するとその場で応じた」
パイプから立ち上がる煙は薄く、吐き出す紫煙も少ない
しかし、仄かに香る

「米国からの連絡とは言え、曙計画や今後の新規戦術機開発にも影響する。
また、彼等がこの件に乗ったのは、最終的にはNATOの拡大を視野に入れてであろう。
彼等の本音としては、西ドイツでは満足せず、北はフィンランド、東はバルト三国、南はトルコという路線で行きたいのであろう」
若い官吏は両掌を組み、椅子に座りながら尋ねる
「ハバロフスク遷都の影響を考慮してですか」
大使は、右手にパイプを持ちながら聞く
一口吸うと、彼の疑問に応じた
「そうだ。
現在、ソ連はBETAに侵食された中央アジアを中心にして東西に分割されつつあるが、仮に今回の事が終わったとしても、復興には相応の時間が掛かる。
ポーランドや東ドイツに居る欧州派遣ソ連軍の維持も厳しいというのが、情報筋の見立てだ。
その様な事から導き出されるのは、白ロシア、ウクライナを対ソ緩衝地帯にするという試案だ」
 
 官吏は、大使の見解に絶句した
彼は、その様な事実が、夢物語を語る様で不信感を強める
「BETAの混乱に乗じ、東欧圏を非共産化させ、NATO諸国に組み込む。
この様な、恐るべき策謀の中に、我が国は利用されつつあると言う事だよ。
珠瀬君、君の意見は正しい。
だが、外交は正論ばかりでは通らない。
政治とは常に妥協の産物。
私とて、これ以上の日米関係の混乱は殿下に申し訳できぬのだよ……」
彼は、ゆっくりとパイプを吹かす
回転椅子の背もたれに寄り掛かり、机を支えにして背面の窓側に体を向ける
「閣下……」
 珠瀬は、窓の外を見る大使の背を見る
彼から見て、小柄な男は、何時にも増して小さく感じた
「私としては、殿下をお守りする為に、あの新型機のパイロットや新型機を米国の駒として差し出す。
その件は、問題ないと、思っている。
殿下あっての日本、殿下あっての武家。
大命を拝領しながら、日々どの様にして、その御心に沿えるか……」
彼は立ち上がると、深々と大使に礼をした
「閣下には、貴重な御時間を割いて頂いて……。
私は、これで失礼いたします」
後ろを向いた侭の大使に再度、ドアから礼をすると、静かに戸を閉め、その場から立ち去った


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