第三十八話 速水の占いはその二
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「高い教養を備えています」
「そうですか」
「武士として」
「武士ですか」
「士族ですね」
「明治維新からの身分ですね」
「農工商が平民となり」
そうしてというのだ。
「そして武士は士族となりました」
「けれど四民平等で」
「その違いはほぼありませんでした」
「そうでしたね」
「それで武士は概念となっていきました」
「文武両道備えた」
「そうです、軍人ならば」
この職業の者達はというのだ。
「武士であると」
「そうした風にですか」
「考えられていまして」
それでというのだ。
「訓練や武芸で身体を鍛えるだけでなく」
「学問もしていたんですか」
「ですから和歌や漢詩もです」
「当時の軍人さん達は詠めたんですね」
「はい」
そうであったとだ、速水は咲に答えた。
「そうなっています」
「そうですか」
「そして伊藤博文もです」
「和歌とか漢詩が出来たんですね」
「しかもかなり評価が高いです」
「そうだったんですね」
咲はこの話に意外といった顔を見せた。
「ただ政治家であるだけでなく」
「勿論古典の素養も高かったです」
「教養もあったんですね」
「そうでした」
「意外ですね」
「それで人間的な深みもです」
かなりの教養も持っていてというのだ。
「備えていました」
「凄い人だったんですね」
「そうでした」
「そうですか」
「そうしたことも知って頂くと面白いかと」
「そうですね、よく政治家として凄いとか女好きとか言われますが」
咲は伊藤の代名詞ともなっている艶福家のことも話した、兎角このことは彼を語るうえで外せないことである。
「それだけじゃないんですね」
「プラスです」
「教養もあったんですね」
「それこそ今の学者達よりもです」
「遥かにですか」
「今の歴史学者は日露戦争でこう言います」
速水は少し憮然として述べた。
「この戦争に勝って日本の政治家は戦争をすれば儲かると錯覚して以後戦争をする様になったと」
「違いますよね」
「あの戦争で確かに日本は勝ちました」
このことは事実だというのだ。
「ですが莫大な戦費がかかりました」
「勝ってもですね」
「当時の国家予算の何年分もの戦費でした」
「それは凄いですね」
「それを見て儲かると誰が思うか」
速水は咲に問う様に話した。
「思いませんね」
「誰も思いませんね」
「戦後日本の知識人の世界は終戦直後一変しました」
「戦争に負けて」
「マルクス主義が雪崩込み」
そうしてというのだ。
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