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イキリと熊
第三章

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「ゴガア!」
「うわあっ!」
 熊は自分に殴りかかってきた原清から身を守る為にだった。
 反撃に出た、それで爪と牙で攻撃してだった。
 張り手の様な一撃を浴びせ最後は体当たりで吹き飛ばした、そのうえで山の中に去っていった。熊はそのまま姿を消したが。
「これは酷い」
「すぐに救急のヘリコプターを呼ぼう」
「全身傷だらけじゃないか」
「意識を失っているぞ」
「このままだと死ぬぞ」
 監督も選手達も倒れている原清に駆け寄った、すると。
 彼は瀕死の重傷を負っていた、それですぐにスマートフォンで救急のヘリコプターを呼んでもらって病院に担ぎ込んでもらった。
 原清は幸い一命は取り止めた、だが。
「五十七針か」
「はい、骨折は二十四ヶ所です」
「とんでもない怪我です」
「そして一生寝たきりだそうです」
「脊椎が複雑骨折で」
「そうか、助かったがな」
 監督は選手達から原清の怪我を聞いて言った。
「それではな」
「もう選手としては無理ですね」
「一生寝たきりですから」
「それでは」
「当然だ、熊は怖いんだ」
 監督は苦い顔で言った。
「そんなジムで鍛えた位でだ」
「敵う相手じゃないですね」
「ましてや素手」
「それではですね」
「勝てる筈がない、だから止めたんだがな」
 苦い顔での言葉だった。
「それがな」
「はい、こんなことになるとは」
「残念ですね」
「全く以て」
「そうだな、だが前から愚かの極みだった」 
 原清のこれまでの発言や行動から述べた。
「それではな」
「こうなることも道理ですね」
「自業自得ですね」
「まさに」
「全くだ、馬鹿な奴だ」
 これが結論だった、そしてこの事件の話はすぐに世に広まったが誰もが原清を愚かと言った、彼は一生寝たきりになったが。
 彼を見舞いに来るチームの者は誰もいなかった、それまで親しくしていた者もだった。家族も呆れて離縁して彼は孤独な寝たきりの人生を過ごすことになった、その彼に同情する者はおらず軽蔑さえ馬鹿にされてベッドの上で人生を終えた。


イキリと熊   完


                   2022・1・25
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